首都圏新築マンション市場の動向(2024年9月)~マンション発売戸数は今後も低水準にとどまる見通し

2024年10月31日

(渡邊 布味子) 不動産市場・不動産市況

■要旨

2024年9月の首都圏新築マンションの平均価格は2カ月連続で上昇した。また発売戸数は6カ月連続で減少し、2024年度上期累計は過去最少となった。販売価格の上昇と販売戸数の減少が続くなか、価格帯別では高額物件の占める割合が高まっている。
 
首都圏の新築マンション市場では、今後、需要面においては住宅ローン金利上昇、供給面においては用地取得減少の影響が本格化することが予想され、発売戸数は長期にわたって低水準にとどまる可能性が高い。
 
<需要面:住宅ローン金利の上昇>
前回の利上げ局面(2006年~2007年)を振り返ると、新築マンションの販売戸数は減少傾向で推移している。さらに、現在の販売価格が2006年当時と比較して約2倍の水準に上昇していることを踏まえると、金利上昇の影響がマンション需要をより強く押し下げる可能性があろう。
 
<供給面:デベロッパーによるマンション用地取得は例年の半分以下に減少>
一方、供給面では、デベロッパーによるマンション用地取得が大きく減少している。エリア別では郊外部での取得が減少し、東京都心部への集積傾向がみてとれる。全体に占める建築コストの割合が低く、価格転嫁のしやすい都心立地の高額物件でなければ、マンション開発の採算が合わない状況になりつつある。

加えて、都心部ではマンション用地の取得はホテル用地と競合するため、好調なインバウンド需要を背景にマンションデベロッパーが買い負けるケースも多い。こうした事業環境を踏まえると、新築マンションの販売戸数は今後も低水準にとどまることが予想される。

■目次

1.首都圏新築マンション市場の動向(2024年9月時点)
2.金利上昇と用地取得減少の影響。販売戸数は今後も低水準となる見通し

金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子(わたなべ ふみこ)

研究領域:不動産

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴

【職歴】
 2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
 2006年 総合不動産会社に入社
 2018年5月より現職
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員

・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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