ユーロ圏GDP(2024年7-9月期)-前期比0.4%で成長は加速

2024年10月31日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:前期比0.4%で成長加速

10月30日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏GDPの一次速報値(Preliminary Flash Estimate)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏20か国GDP(2024年4-6月期、季節調整値)】
前期比は0.4%、市場予想1(0.2%)を上回り、前期(0.2%)から上昇した(図表1)
前年同期比は0.9%、市場予想(0.8%)を上回り、前期(0.6%)から上昇した(図表2)

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想も同様

2.結果の詳細:消費がGDPを押し上げた見込み

ユーロ圏の24年7-9月期の成長率は前期比0.4%(年率換算1.5%)となり、4-6月期(前期比0.2%、年率0.8%)から加速した。実質GDPの水準はコロナ禍前(19年10-12月期)対比では4.6%、エネルギー価格が高騰した22年の夏(22年7-9月期)対比では0.9%となった。

経済規模の大きい4か国の伸び率を見ると、前期比ではドイツ0.2%(4-6月期▲0.3%)、フランス0.4%(4-6月期0.2%)、イタリア▲0.0%(4-6月期0.2%)、スペイン0.8%(4-6月期0.8%)となり、今回公表された他のユーロ圏加盟国を含め、多くの国は前期比プラスだったが、イタリアとラトビアはマイナス成長となった(図表3横軸)。前期比伸び率について、ドイツ統計局は機械政府消費や家計消費が増加したと指摘、イタリア統計局は供給面では農林水産と工業が減少する一方、サービス業が増加、需要面では内需の寄与(在庫変動)はプラスだったが純輸出の寄与がマイナスだったと指摘している(フランス・スペインは後述)。なお、前年同期比ではスペインの回復が進む一方で、ドイツ、アイルランド、ラトビア、オーストリアがマイナスとなった(図表3縦軸)。なお、エネルギー危機対比で見るとアイルランド、オーストリア、ドイツがマイナスとなっている(図表4、ただしアイルランドはコロナ禍以降の回復力で見ると突出して大きい)。
次にフランスとスペインは各国統計局(フランス国立統計経済研究所(INSEE)、スペイン統計局(INE))がGDPの詳細を公表しているので、以下で確認する。

フランスの成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費0.5%(前期0.0%)、政府消費0.5%(前期0.5%)、投資▲0.8%(前期▲0.1%)、輸出▲0.5%(前期0.5%)、輸入▲0.7%(前期0.1%)となった(図表5)。在庫変動の前期比寄与度は0.1%ポイント、純輸出の前期比寄与度は0.1%ポイントであり、主に個人消費、政府消費が成長をけん引した。産業別の付加価値は、工業が0.8%(前期0.0%)、建設業が▲0.1%(前期▲0.9%)、市場型サービス産業0.4%(前期0.3%)、非市場型サービス0.5%(前期0.1%)だった。より細かい内訳では、輸送(▲0.8%)や卸・小売(前期比▲0.6%)が不振な一方、芸術・娯楽・家計向けサービス(3.7%)、電気・ガス・水道(2.7%)、情報サービス(2.1%)が成長を押し上げた。
スペインの成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費1.1%(前期1.0%)、政府消費2.2%(前期0.6%)、投資▲0.9%(前期0.4%)、輸出0.9%(前期0.7%)、輸入1.2%(前期0.6%)となり、個人消費、政府消費、輸出が高めの伸びを継続している(図表6)。産業別には、工業が0.2%(前期1.1%)、建設業が▲1.4%(前期0.6%)、サービス業が1.1%(前期1.2%)となり、サービス業が前期に引き続き高成長を記録した。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

 ・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
  アドバイザー(2024年4月~)

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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