まず、パズルの問題を見ていく。アメリカのナショナル・フットボール・リーグ(NFL)での公式戦がパズルの舞台だ。あなたは、NFLのあるチームのマネージャーを務めているものとしよう。
(ポイント・アフター・タッチダウンの選択の問題)
アメリカンフットボールのある試合(NFL公式戦)で、あなたのチームは14点差で負けています。試合終了まで時間はあまり残っていません。この状態で、あなたのチームはタッチダウンを成功させて8点差としました。試合に勝つためには、ポイント・アフター・タッチダウンとして、エキストラキックを選択すべきでしょうか、それともツーポイント・コンバージョンを選択すべきでしょうか? ただし、エキストラキックの成功確率は95%とし、ツーポイント・コンバージョンの成功確率は45%とします。また、オーバータイムに入った後に勝利する確率は50%とします。
このパズルでは、アメリカンフットボールの専門用語がいくつも使われている。また、解答者がこのスポーツの仕組みをよく知っていることが前提となっている。アメリカンフットボールについてあまり知らないという人には、そもそも何の話なのか、よくわからないだろう。そこで、最初にアメリカンフットボールの仕組みを簡単に見ておこう。
まず、得点の種類について。アメリカンフットボールでは、大きく4つ得点の仕方がある。
1つ目に、相手チームのエンドゾーン(ゴールラインの後ろ10ヤード(約9.1メートル)までのゾーン)にボールを持ち込むとタッチダウンとなり6点を獲得。2つ目に、攻撃側のキックしたボールが相手チームのゴールの2本の柱の間のクロスバーの上を直接通過したらフィールドゴールとなり、3点をゲット。3つ目に、攻撃側が自陣のエンドゾーン内で守備側のチームにタックルされると、セイフティとして、守備側のチームに2点が与えられる。
そして4つ目が、コンバージョン。タッチダウンをすると、そのチームに、エキストラキックまたはツーポイント・コンバージョンの選択が与えられる。
エキストラキックを選択すると、ゴールライン15ヤード前の地点からキックをして、成功すれば1点を追加で獲得する。
ツーポイント・コンバージョンを選択すると、ゴールライン2ヤード前の地点から、もう1回の攻撃が与えられる。ランプレーかパスプレーで相手チームのエンドゾーンにボールを持ち込むと、ツーポイント・コンバージョン成功として、2点を追加で獲得する。
つぎに、1試合の時間構成について。試合は、1クォーター15分×4クォーターの計60分間で行われ、多くの点を獲得したチームの勝利となる。第4クォーターが終了しても同点の場合、オーバータイムとしてさらに15分間が追加される。どちらかのチームが最初に得点を入れた時点で試合は終了し、得点したチームの勝利となる。15分が経過しても得点が入らない場合は、基本的に決着がつくまで15分刻みのオーバータイムが適用されていく。(日本の場合は、日本アメリカンフットボール協会がこれとは別の超過節(オーバータイム)の公式規定を定めている。興味のある方は、同協会のホームページをご覧いただきたい。)
さて、パズルの問題に戻ろう。14点ビハインドの状態でタッチダウンにより6点獲得したため、8点差で負けている状態に変わった。このとき、成功確率の高いエキストラキックで1点追加を確保しにいくか、それとも、成功確率の低いツーポイント・コンバージョンで2点追加を狙いにいくか - どちらの選択が勝利の確率を高めるか、という問題である。