まず、彼らの価値観を捉える上で欠かせないのが、デジタル志向の高さです。Z世代はデジタルネイティブ、あるいはスマホネイティブで、物心ついた頃からSNSやECが生活に浸透しています。よって、商品購入時にはマスメディアの広告宣伝よりも、インターネットやSNS上の口コミ・レビュー、インフルエンサーを重視し、ネットを介して簡単・便利に入手できることが当たり前と考えています。また、成熟した消費社会では安価で良質な商品があふれ、膨大な情報が巡っているため、タイムパフォーマンスやコストパフォーマンスを重視し、効率的かつ経済的な選択を好む傾向が強いと考えられます。情報やサービスへの迅速なアクセスを求める一方、無駄な支出を抑え、コストに見合った価値を追求する姿勢が見られるでしょう。
次に、体験志向については、若者の消費対象はモノからコト(体験)へと移行しています
2。安価で良質な商品に囲まれて育ったZ世代は、モノのスペックよりも、心に残るような体験や珍しい体験に価値を見出す傾向があります。
一方でSNSが普及し、いつでも誰かの体験を見ることができるために、どのような体験でも既視感を覚えやすくもなっています。よって、再現性が低く、限定的で特別感のあるトキ消費
3に価値を見出す傾向が強いようです。トキ消費とは、フェスやライブ、ワールドカップ観戦、アイドル総選挙、コラボカフェ、ハロウィンイベントなど、訪れた場所や周りにいる人々と、その瞬間だけでしか味わえない体験に価値を見出す消費行動のことで、非再現性と一体感があることに価値があります。
さらに、選択肢が豊富にある中では、パーソナライズ(カスタマイズ)志向が高い傾向もあるでしょう。デジタル化の進展によって、企業は顧客の属性や行動履歴などに基づいて、一人一人のニーズに合わせた商品やサービスの提供が可能となっています。Z世代は、企業のこのような柔軟な対応を活かして、自分らしさを表現することにも長けています。
最後に、Z世代はエシカル志向や社会貢献意識の高さでも注目されることが多いようです
4。幼少期から地球温暖化などの環境問題や、貧困、格差といった社会課題に触れる機会が多く、SDGsに関わる教育も受けてきました。また、成熟した消費社会で生まれ育ったことで、もともと消費生活における満足度が高いために、サステナビリティや企業の社会的責任に関心が向きやすいという面もあるでしょう。したがって、Z世代は環境に優しい商品や社会的に意義のある活動を支持し、消費行動を通じて自身の価値観を表現する傾向も強いのではないでしょうか。
2 例えば、消費者庁「令和4年版消費者白書」第1部 第2章 第2節(1)にて、「若者は「食べること」等にお金をかけつつ、「参加型のイベント」、「有名人やキャラクター等を応援する活動」にお金をかけている」ことが指摘。
3 参考:「消費潮流の最前線 第1回 モノ、コトの次の潮流【トキ消費】とは」、博報堂生活総合研究所(2019/12/15)等
4 例えば、経済産業省「通商白書2021」第Ⅱ部 第2章 第1節2(2)人材の獲得・維持にて「日本に限らずグローバルでみてもミレニアル世代およびZ世代の社会課題への意識は非常に高い。」ことが指摘。