米国大統領選で争点にならないオバマケア-されどよくできたパッチワーク-

2024年09月03日

(磯部 広貴) 保険商品

■要旨

2010年に民主党オバマ政権が行った医療保険制度改革、通称オバマケアは、かつて共和党が頻繁に攻撃し両党の政策の相違を際立たせてきたにも関わらず、本年11月の大統領選では大きな話題となっていない。
 
複雑多岐で、従来の制度を前提に対策を組み立てたオバマケアはパッチワーク(つぎはぎ作業)とも批判されたが、無保険者削減で一定の成果を収めてきた。
 
近年は特に医療保険取引所での加入者が急増している。低所得層向け公的制度であるメディケイドの対象となるほど貧しくないものの団体医療保険を提供する企業などには勤務できない層を対象に、補助金を支給しつつ民間の個人医療保険に加入できるようにした制度である。コロナ後の加入資格管理が再開されたことによるメディケイド脱退者を救う一方、共和党が強くメディケイドの加入資格拡張を認めなかった10州での医療保険取引所活用が全米平均を大きく上回る勢いで増加している。
 
今やオバマケアを争点化することはトランプ氏にとっても好ましくない。オバマケアはかなりよくできたパッチワークであったと評してよいだろう。

■目次

1――オバマケアが話題に出ない
2――無保険者削減のためのパッチワーク
3――医療保険取引所での加入者急増
4――今後、争点となりうるか

保険研究部   主任研究員・気候変動リサーチセンター兼任

磯部 広貴(いそべ ひろたか)

研究領域:保険

研究・専門分野
内外生命保険会社経営・制度(販売チャネルなど)

経歴

【職歴】
1990年 日本生命保険相互会社に入社。
通算して10年間、米国3都市(ニューヨーク、アトランタ、ロサンゼルス)に駐在し、現地の民間医療保険に従事。
日本生命では法人営業が長く、官公庁、IT企業、リース会社、電力会社、総合型年金基金など幅広く担当。
2015年から2年間、公益財団法人国際金融情報センターにて欧州部長兼アフリカ部長。
資産運用会社における機関投資家向け商品提案、生命保険の銀行窓版推進の経験も持つ。

【加入団体等】
日本FP協会(CFP)
生命保険経営学会
一般社団法人 アフリカ協会
一般社団法人 ジャパン・リスク・フォーラム
2006年 保険毎日新聞社より「アメリカの民間医療保険」を出版

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