米インフレの鈍化が鮮明-コアサービス価格の低下から25年にかけてインフレの低下基調は持続へ

2024年08月26日

(窪谷 浩) 米国経済

(コアサービス(除く住居費))労働需給の緩和から賃金上昇率の低下基調は持続
労働市場は24年7月の失業率が4.3%と4ヵ月連続で上昇し、21年10月以来の水準となるなど労働需給の緩和がみられる(図表8)。
労働需給の緩和を背景に雇用統計の時間当たり賃金は24年7月の前年同月比が+3.6%となった。また、賃金・給与に加え給付金も含めた雇用コスト指数は24年4-6月期が前年同期比+4.1%となった。いずれも生産性を加味した場合のFRBの2%物価目標と整合的な3%~3%台半ばの水準を上回っているものの、時間当たり賃金はレンジ内への低下が視野に入ってきたと言えよう。

労働市場の減速が続く中で失業率は今後も上昇が見込まれるため、労働需給の一段の緩和から今後も賃金上昇率の低下傾向が続く可能性が高い。このため、賃金と連動性の高いコアサービス(除く住居費)も低下基調が持続しよう。
(期待インフレ率)金融市場、家計、専門家調査ともにインフレの安定を示唆
金融市場が織り込む5年先5年の期待インフレ率は24年以降概ね2.2%~2.5%の狭いレンジで推移しており、インフレの安定を見込んでいる。(図表9)。

また、家計が予想する24年8月の今後1年間のインフレ率予想(前年同月比)は+2.9%(前月:+2.9%)、今後5~10年間が+3.0%(前月:+2.8%)と24年6月以降は概ね3%近辺での推移となっており、家計の期待インフレ率は安定している(図表10)。

FRBが重視する経済専門家が予想するCPI(前年同月比)の今後5年間と10年間の平均は、24年7-9月期がそれぞれ2.4%、2.3%となった。専門家調査は24年以降概ねFRBの物価目標と整合的な水準となっている。

このため、期待インフレ率は金融市場、家計、専門家調査ともに今後インフレが安定することを予想している。

3.今後の見通し

3.今後の見通し

これまでみたようにCPIは足元で物価上昇圧力の緩和が明確になっている。エネルギー価格や食料品価格は今後も低位安定が見込まれるほか、コア財価格もコロナ禍以前のゼロ%近辺での推移が見込まれる。コアサービス価格は住居費が夏場以降、低下が緩やかになる可能性はあるものの、労働需給の緩和を背景に賃金上昇率の低下に伴う住居費除きのコアサービス価格の低下が期待できる。

一方、エネルギー価格は地政学リスクを背景に急騰するリスクを抱えており、インフレ再燃のリスクは残る。ただし、エネルギー価格の急騰が回避できれば、CPIはコアサービス価格の低下もあって総合指数、コア指数ともに25年にかけて緩やかながら低下基調の持続が見込まれる。

当研究所はCPI総合が24年10-12月期に前年同月比+2.7%、25年10-12月期が+2.3%、コア指数がそれぞれ+2.9%、+2.3%を予想している。
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩(くぼたに ひろし)

研究領域:経済

研究・専門分野
米国経済

経歴

【職歴】
 1991年 日本生命保険相互会社入社
 1999年 NLI International Inc.(米国)
 2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
 2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
 2014年10月より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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