史上最高値圏を維持する金価格~今後の展開を考える

2024年08月02日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■要旨
 
  1. 国内外の金(Gold)価格はここ数年上昇基調となり、足元も史上最高値圏にある。国内金先物価格は3年余りでほぼ倍増しており、インフレヘッジ機能を存分に発揮している。
     
  2. 国内金先物価格は「NY金先物価格(ドル建て・グラム当たり)×ドル円レート(円/ドル)」に近似して動くため、NY金が上昇したり、円安が進行したりすれば上昇する。この3年余り、NY金は、(1)世界的なインフレ懸念による「インフレヘッジ需要の高まり」、(2)地政学リスク・政治リスクの高まり等による「安全資産需要の高まり」、(3)中国をはじめとする国々の「中央銀行による旺盛な金購入」などが追い風となり、3割強上昇した。さらに、この間にFRBによる積極的な利上げ等を背景としてドル円レートが4割以上上昇したことが国内金の上昇を大幅に増幅した。
     
  3. この先年末にかけて、NY金はかなりの上昇余地があると考えられる。ウクライナや中東情勢は終わりが見えない上、米大統領選とその後の大統領交代という不透明感が台頭するため、「安全資産としての金需要」は続きそうだ。「中央銀行による金購入」も構造的であるため継続するだろう。さらに、FRBによる利下げが「金利の付かない金」の魅力を高めるはずだ。現段階では、年末のNY金は1オンス2600ドル台半ばと想定している。
     
  4. NY金先物の上昇は国内金にとっても上昇要因となる。一方、FRBが利下げすることに加え日銀が利上げを志向すると見込まれることは、円高を通じて国内金の重荷となりそうだ。ただし、FRBの利下げや日銀の利上げは既にある程度市場で織り込まれているほか、実需の円売りは健在であることから、均してみれば、さらなる急激な円高進行は避けられる可能性が高いと見ている。現時点では、NY金の上昇を打ち消すほどの円高は進まないと見ており、今年年末の国内金価格は1グラム12000円台半ばと予想している。

 
■目次

1.トピック:史上最高値圏を維持する金価格
  ・インフレで目減りする円資産
  ・金価格上昇の要因
  ・金価格の見通し
2.日銀金融政策(7月)
  ・(日銀)利上げ決定+国債買入れの減額計画決定
  ・受け止めと今後の予想
3.金融市場(7月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート

経済研究部   主席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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