ユーロ圏消費者物価(24年7月)-前年比伸び率はやや上昇

2024年08月01日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:総合指数は前年比やや上昇、コア指数は横ばい

7月31日、欧州委員会統計局(Eurostat)は7月のユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数】
前年同月比は2.6%、市場予想1(2.5%)から上振れ、前月(2.5%)から上昇した(図表1)
前月比は▲0.0%、予想(▲0.1%)から上振れ、前月(0.2%)から低下した

【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数2
前年同月比は2.9%、予想(2.8%)から上振れ、前月(2.9%)から横ばいだった(図表2)
前月比は▲0.2%、前月(0.4%)から低下した

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料も除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。

2.結果の詳細:財インフレも上昇に転じる

7月のHICP上昇率3(前年同月比)は全体で2.6%となり、6月(2.5%)からやや上昇した。一方、「コア部分(=エネルギーと飲食料を除く総合)」は2.9%と7月(2.9%)から横ばいだった。

以下、詳細を「コア部分」「エネルギー」「飲食料(アルコール含む)」の3つに分けて見ていく。

まず、コア部分である「エネルギーと飲食料を除く総合」の内訳を見ると、「エネルギーを除く財(飲食料も除く)」が5月0.7%→6月0.7%→7月0.8%となった。「財」は23年2月の6.8%をピークに16か月連続で低下していたが7月は上昇に転じた。一方、「サービス」(エネルギーを除く)は5月4.1%→6月4.1%→7月4.0%と7月はやや低下した。ただし、サービスインフレも4%前後の高い伸び率での推移が続いている。前年同月比寄与度は、「財」が0.18%ポイント程度、「サービス」が1.67%ポイント程度と見られ、足もとの物価上昇の寄与はサービスが大部分を占める状況が続いている(前掲図表1)。

コア以外の部分では「エネルギー」が前年同月比で5月0.3%→6月0.2%→7月1.3%と前年同月比伸び率が大幅に拡大した。エネルギーの前年同月比寄与度は0.16%ポイント程度と見られる。
「飲食料(アルコール含む)」は、前年同月比で2.3%(6月2.4%)とやや低下したが、足もとでは横ばい圏での推移となっている(図表3)。内訳を見ると、飲食料のうち加工食品の伸び率は2.7%(6月2.7%)で横ばい、未加工食品は1.0%(6月1.3%)と減速した。飲食料の前年同月比寄与度は0.51%ポイント程度(6月は0.48%ポイント)と見られる。

物価上昇の勢いをECBが公表する季節調整済系列で確認すると(図表4)、3か月移動平均後の3か月前比年率で総合指数が2.1%(6月2.2%)、コアが3.3%(6月3.2%)、エネルギーを除く財が0.4%(6月▲0.1%)、サービスが5.0%(6月5.1%)、飲食料が1.8%(6月0.9%)となった。総合指数の物価上昇の勢いはやや弱まったが、コア、財、飲食料では物価上昇の勢いは強まり、サービスでは高止まりしていることから、インフレ圧力は依然強いと見られる。
国別のHICP上昇率は、前年同月比で20か国中、上昇したのは11か国、残りの9か国は低下した(図表5)。また、6か国が物価目標の2%を下回っている。なお、前月比では20か国中11か国がプラスの伸び率となった(図表6)。
 
3 23年からはユーロ圏20か国のデータ、22年までは19か国のデータ(以降も特に断りがない限り同様)。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

 ・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
  アドバイザー(2024年4月~)

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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