情報通信プラットフォーム対処法-ネット上の誹謗中傷への対応

2024年07月29日

(松澤 登) 保険会社経営

■要旨

2024年第213回通常国会において、プロバイダ責任制限法が改正・改称されて、情報通信プラットフォーム対処法(以下、新法)が制定・公布された。1年以内に施行される予定である。
 
新法は、大規模なプラットフォーム事業者において、SNSなどプラットフォーム上で誹謗中傷などの権利侵害を受けた者(以下、被侵害者)から権利侵害となる投稿の削除要求をより円滑・実効的に行えるようにするものである。
 
新法の概要は以下の通りである。大規模プラットフォーム事業者は、被侵害者から侵害情報の送信防止措置を講ずるための申出方法を定め公表を行う。そして申出を受けた場合には、大規模プラットフォーム事業者が選任した専門調査員が遅滞なく調査を行う。そして申出日より、14日以内に送信防止措置を行うかどうかの決定を申出者に通知し、送信防止措置を行わない場合はその理由も通知しなければならないとするものである。
 
また、大規模プラットフォーム事業者は、送信防止措置をとる基準となる削除基準を定め公表しなければならない。また、毎年、削除状況などに関して公表をする義務を負う。
 
SNSによる悲惨な事件は後を絶たない。新法でこの状況が改善することを願ってやまない。

■目次

1――はじめに
2――若干の前提
  1|現行法の概要
  2|新法の概要
3――対象となる大規模プラットフォーム事業者
  1|プラットフォーム事業者
  2|大規模要件とは
4――対応の迅速化にかかわる規定
  1|措置申請窓口の明示・受付通知
  2|調査の実施
  3|申出者に対する通知
5――運用状況の透明化にかかわる規定
  1|送信防止措置の実施に関する基準等の公表・発信者に対する通知
  2|措置の実施状況の公表
6――その他の規定
  1|総務大臣の監督権限
  2|罰則
7――おわりにかえて

保険研究部   取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登(まつざわ のぼる)

研究領域:保険

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

経歴

【職歴】
 1985年 日本生命保険相互会社入社
 2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
 2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
 2018年4月 取締役保険研究部研究理事
 2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
 2025年4月より現職

【加入団体等】
 東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
 東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
 大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
 金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
 日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等

【著書】
 『はじめて学ぶ少額短期保険』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2024年02月

 『Q&Aで読み解く保険業法』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2022年07月

 『はじめて学ぶ生命保険』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2021年05月

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