米個人所得・消費支出(24年5月)-コアPCE価格指数(前月比)は前月から低下、インフレ鈍化を確認

2024年07月01日

(窪谷 浩) 米国経済

1.結果の概要:個人所得(前月比)は市場予想を上回る一方、個人消費は市場予想を下回る

6月28日、米商務省の経済分析局(BEA)は5月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.5%(前月:+0.3%)と前月を上回ったほか、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%も上回った(図表1)。個人消費支出は前月比+0.2%(前月改定値:+0.1%)と+0.2%から小幅下方修正された前月を上回った一方、市場予想の+0.3%は下回った。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+0.3%(前月:▲0.1%)と前月からプラスに転じた一方、市場予想の+0.3%に一致した(図表5)。貯蓄率1は3.9%(前月:3.7%)と前月から+0.2%ポイント上昇した。

価格指数は、総合指数が前月比横這い(前月:+0.3%)と前月を下回った一方、市場予想(横這い)に一致した。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.1%(前月改定値:+0.3%)と+0.2%から小幅上方修正された前月から低下、市場予想(+0.1%)に一致した(図表6)。前年同月比は総合指数が+2.6%(前月:+2.7%)と前月から低下、市場予想(+2.6%)に一致した。コア指数は+2.6%(前月:+2.8%)とこちらも前月から低下、市場予想(+2.6%)に一致した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:コアPCE価格指数(前月比)は20年11月以来の水準に低下

個人消費(前月比)の名目ベースは4月に大幅な低下がみられたものの、5月は財消費の回復に伴い幾分持ち直した(図表1)。さらに実質ベースでも前月のマイナスからプラスに転じるなど回復を示した。

個人所得(前月比)は5月の賃金・給与が+0.7%と高い伸びとなったこともあって、こちらも前月から上昇した。また、可処分所得の伸びが個人消費の伸びを上回った結果、貯蓄率が2ヵ月連続で上昇した。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数の前月比は総合指数では横這いとなったほか、物価の基調を示すコア指数も20年11月以来の水準に低下するなど、5月は物価上昇圧力が和らいでいることを確認した。もっとも、前年同月比では総合指数、コア指数ともに前月から低下したものの、依然としてFRBの物価目標である2%を上回っており、FRBが早期の利下げを開始する可能性は低い。

3.所得動向:賃金・給与の伸びが大幅に加速

5月の個人所得(前月比)では、賃金・給与が23年11月以来の伸びに鈍化した前月から、5月は+0.7%(前月:+0.2%)と大幅に加速し、24年2月以来の水準に回復した(図表2)。また、利息配当収入が+0.4%(前月:+0.4%)、移転所得が+0.4%(前月:+0.4%)と前月並みの伸びを維持した。一方、自営業者所得は▲横這い(前月:横這い)とこちらは小幅ながら前月からマイナスに転じた。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、5月の名目が+0.5%(前月:+0.3%)と前月から伸びが加速した(図表3)。また、価格変動の影響を除いた実質ベース(前月比)は+0.5%(前月:▲横這い)と前月からプラスに転じた。

4.サービス消費の伸びは鈍化も財消費が回復

5月の名目個人消費(前月比)は、サービス消費が+0.3%(前月:+0.4%)と前月から小幅ながら伸びが鈍化した一方、財消費が+0.2%(前月:▲0.5%)と前月からプラスに転じるなど財消費が回復した(図表4)。

財消費は、耐久財が+0.3%(前月:▲0.9%)、非耐久財が+0.2%(前月:▲0.2%)といずれも前月からプラスに転じた。

耐久財では、自動車・自動車部品が▲横這い(前月:+0.2%)と前月から小幅ながらマイナスに転じた一方、家具・家電が▲0.1%(前月:▲0.6%)とマイナス幅が縮小したほか、娯楽財・スポーツカーが+0.9%(前月:▲2.2%)とプラスに転じて耐久財消費全体を押し上げた。

非耐久財ではガソリン・エネルギーが▲2.1%(前月:+1.1%)と前月からマイナスに転じた一方、食料・飲料が▲0.1%(前月:▲0.3%)とマイナス幅が縮小したほか、衣料・靴が+0.8%(前月:▲横這い)とプラスに転じて非耐久財消費全体を押し上げた。

サービス消費は、輸送サービスが+0.7%(前月:▲2.0%)と前月からプラスに転じたほか、医療サービスが+0.9%(前月:+0.5%)と伸びが加速した。一方、住宅・公共料金が+0.3%(前月:+0.5%)と前月から伸びが鈍化したほか、金融サービスが▲0.1%(前月:+0.9%)、外食・宿泊が▲0.3%(前月:+0.3%)、娯楽サービスが▲横這い(前月:+0.5%)と前月からマイナスに転じた。

5.価格指数:エネルギーは前月比でマイナスに転じた一方、前年同月比は前月から上昇

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲2.1%(前月:+1.2%)と4ヵ月ぶりにマイナスに転じた(図表6)。一方、食料品価格指数は+0.1(前月:▲0.2%)とこちらは3ヵ月ぶりにプラスに転じた。

前年同月比は、エネルギー価格指数が+4.8%(前月:+3.0%)と3ヵ月連続でプラスとなったほか、前月からプラス幅が拡大した(図表7)。食料品価格指数は+1.3%(前月:+1.3%)と前月並みの伸びを維持したほか、83ヵ月連続でプラスを維持した。
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩(くぼたに ひろし)

研究領域:経済

研究・専門分野
米国経済

経歴

【職歴】
 1991年 日本生命保険相互会社入社
 1999年 NLI International Inc.(米国)
 2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
 2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
 2014年10月より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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