少子化で減り続ける若手社員~膨らむミドルシニア社員の活用が企業の課題に

2024年06月24日

(坊 美生子) 高齢化問題(全般)

1――はじめに

新卒採用が学生の「売り手市場」と言われるようになって10年近い。厚生労働省と文部科学省の調査によると、今年3月に卒業した大学生の就職率は98.1%(4月1日時点)で、過去最高を更新した。就職率は、新型コロナウイルスの影響を受けた2~3年前はやや低下したが、長期的にみれば、2015年卒以降、90 %台後半の高水準で推移している(図表1)。

そのような中、各企業は、インターンや内定者向け行事を実施するなど、積極的な採用活動をしているが、仮に今年や来年、採用目標を達成できたとしても、今後も達成し続けられるかどうかは分からない。周知のように、国内では、少子化が長く続いてきたことによって、若年層の労働力人口そのものが減少しているからである。だからと言って、外国人材の採用も、そう簡単ではない。

従って、社会全体の持続可能性を維持するためには、労働力の人口ピラミッドの変化に合わせて、中高年の年代層までが、フルに能力を発揮できるような環境を目指さなければならないだろう。各企業単位で見れば、社員の年代別構成比の変化に合わせて、各年代層の役割や活用方法を見直していかなければならないのではないだろうか。本稿では改めて、このような年代別構成比の変化と、各年代層を活用する重要性について、政府統計を用いて説明する。

2――働く人に関する人口ピラミッドの過去30年の変化

2――働く人に関する人口ピラミッドの過去30年の変化

2-1│人口ピラミッド
まず国内人口について、総務省の「国勢調査」の結果を基準に、その後の人口動向を反映させた「人口推計」から、過去30年間の変化をみたものが図表2である。総人口はほぼ変わりないが、年代分布が変化したことが分かる。1992年には、「団塊世代」を含む40歳代と、「団塊ジュニア世代」を含む10歳代後半から20歳代前半の2か所に、人口の塊があった。いずれも、5歳刻みで1,000万人前後の大きな塊を形成している。2002年には、塊がそのまま持ち上がって「団塊世代」を含む70歳代と、「団塊ジュニア世代」を含む40歳代後半から50歳代が膨らんでいる。しかし、団塊ジュニアの子ども世代にあたる20歳代から30歳代には塊が発生せず、年齢階級が下がるほど人口が減り続けている。少子化による現象と言える。10歳未満の人口は、5歳刻みで見れば、400~500万人足らずである。
2-2│労働力人口ピラミッド 
次に、人口分布に就業環境を反映した労働力人口について、総務省の「労働力調査」より、過去30年の分布の変化をみたものが図表3である。労働力人口自体は、働く高齢者や女性が増えたことにより、過去30年で約300万人増えたが、分布はより中高年寄りになったことがグラフから分かる。

1992年には、労働力人口の塊は、団塊世代を一部含む「40~44歳」と、団塊ジュニアを一部含む「20~24歳」の2か所だったが、2022年には、団塊ジュニアを含む50歳前後の1か所のみになった。団塊世代は70歳を過ぎて次々と労働市場から退出し、塊が消失した。ただし、働き続けている人も多いことから、「70歳以上」の労働力人口は、1992年に比べて約3倍の約530万人に増えた。

また2022年には、団塊ジュニアより若い世代は、年齢階級が下がるほど、概ね減少していく逆階段状となっている。例えば、大学の新卒を含む「20~24歳」は、1990年には700万人を超えていたが、2022年には3割以上減少して約460万人となった。高校の新卒を含む「15~19歳」は、1992年の約179万人から、2022年には約4割減少して約109万人になった。新卒採用の逼迫が伺える。

女性は、過去30年で、20歳代後半以降のほとんどの年齢階級で増加した。特に20歳代後半から30歳代前半では、人口に占める労働力人口の割合である労働力人口比率の上昇幅が20~30ポイントに上った。30年前は出産退職が多かったが、仕事と家庭の両立支援策などにより、減少したからだ。しかし、若年女性の労働力人口が増加しても、少子化による若年層全体の減少幅を補うほどには至っていない。

生活研究部   准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任

坊 美生子(ぼう みおこ)

研究領域:ジェロントロジー(高齢社会総合研究)

研究・専門分野
中高年女性のライフデザイン、高齢者の交通サービス、ジェロントロジー

経歴

【職歴】
 2002年 読売新聞大阪本社入社
 2017年 ニッセイ基礎研究所入社

【委員活動】
 2023年度~ 「次世代自動車産業研究会」幹事
 2023年度  日本民間放送連盟賞近畿地区審査会審査員

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