英国雇用関連統計（24年5月）－失業率は緩やかに上昇

1．結果の概要：失業率は4.4％に緩やかに上昇

6月11日、英国国家統計局（ＯＮＳ）は雇用関連統計を公表し、結果は以下の通りとなった¹。

【5月】
・失業保険申請件数²は前月（157.83万件）から5.03万件増の162.86万件となった（図表1）。
・申請件数の雇用者数に対する割合は4.3％となり、前月（同4.1％）から上昇した。
・給与所得者数³は前月（3032.0万人）から0.3万人減の3031.7万人となった。増減数は前月（▲3.6万人）から減少幅が縮小し、市場予想⁴（▲1.0万人）を上回った。

【4月（24年2-4月の3か月平均）】
・失業率は4.4％で前月（4.3％）から上昇、市場予想（4.3％）を上回った（図表1）。
・就業者は3296.7万人で3か月前の3310.7万人から13.9万人減少した。増減数は市場予想（▲9.8万人）を上回り、前月（▲17.8万人）からマイナス幅が縮小した。
・週平均賃金は前年比5.9％で前月（5.9％）と同じ、市場予想（5.7％）を上回った（図表2）。

¹ 労働力調査ベースの統計については、回答率の低下を受け、ＯＮＳでは開発中の公式統計という位置付けで公表されている。
² 求職者手当（ＪＳＡ：Jobseekerʼs Allowance）、国民保険給付（National Insurance credits）を受けている者に加えて、主に失業理由でユニバーサルクレジット（ＵＣ）を受給している者の推計数の合算。なお、ＵＣはＪＳＡより幅広い求職手当てであり、失業者数を示す統計としては過大評価している可能性がある。このため、ＯＮＳは開発中の公式統計という位置付けで公表している。
³ 歳入関税庁（ＨＲＭＣ）の源泉徴収情報を利用した統計。直近データは約85％のデータから推計。
⁴ bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2．結果の詳細：5月の給与所得者の賃金上昇率（速報値）は大幅に減速

まず5月のデータとして公表されている求人数および給与所得者数を確認すると、求人数が3-5月の平均で90.4万件となった。前月2-4月期（90.8万件）から微減し、22年3-5月平均（130.4万件）をピークとした減少傾向は継続している（図表3）。5月単月の求人数は92.3万件だった⁵。

給与所得者データは、4月の給与所得者数（速報値）が前月差で0.3万人減となり、2か月連続で減少した。なお、2月の前月差は▲8.5万人→▲3.6万人、3月の前月差は▲0.5万人→+1.5万人といずれも改善方向に改定されている。産業別には卸・小売業、居住・飲食業、製造業での減少が目立つ一方、事務サービスや教育サービスが増加した。5月の給与額（中央値）伸び率は前年同月比5.2％となり4月（6.8％）から大幅に減速した。なお、4月の数値は速報値の6.9％から小幅に下方修正されている。

労働力調査ベースの数値は、24年2-4月期の失業率で4.4％となり、3月の4.3％からやや上昇した（前掲図表1）。失業者と非労働力人口が増加し、就業者が減少した。労働参加率は引き続きコロナ禍後の最低値付近で推移している。

労働時間は32.0時間（前年差0.1時間）、フルタイム労働者で36.6時間（同▲0.1時間）となった（前掲図表2）。週当たり総労働時間はコロナ禍前比▲0.2％だった。名目賃金は前年比で5.9％となり、前月（5.9％）から横ばい、ボーナスを除く定期賃金伸び率も前年比6.0％と前月（6.0％）から横ばいだったが、市場予想（6.1％）は下回った。3か月前比年率で見た賃金上昇の勢いは6.9％まで加速し（図表5）、ボーナスの水準も高止まりしている。なお、4月からは23才以上を対象にした最低賃金が9.8％引き上げられている。実質ベースの伸び率は、ボーナス含みで前年比2.2％、ボーナスを除きで同2.3％となり、インフレ率が低下していることを受けて緩やかに上昇している。

処遇改善を求めたストライキは、4月は件数ベースで63件、労働損失日数で1.7万日となった。件数・日数ともに3月に続き低水準に留まっている（図表6）。

⁵ 3か月平均のデータは季節調整値だが、単月データは未季節調整値のため季節性が除去されていないため留意が必要。

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経済研究部主任研究員

高山武士（たかやまたけし）

研究領域：経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

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経歴＋－

【職歴】
　2006年　日本生命保険相互会社入社（資金証券部）
　2009年　日本経済研究センターへ派遣
　2010年　米国カンファレンスボードへ派遣
　2011年　ニッセイ基礎研究所（アジア・新興国経済担当）
　2014年　同、米国経済担当
　2014年　日本生命保険相互会社（証券管理部）
　2020年　ニッセイ基礎研究所
　2023年より現職

　・SBIR（Small Business Innovation Research）制度に係る内閣府スタートアップ
　　アドバイザー（2024年4月～）

【加入団体等】
　・日本証券アナリスト協会　検定会員

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