保険研究部 取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長
松澤 登(まつざわ のぼる)
研究領域:保険
研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務
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GKはそのOSを利用または相互運用する第三者のアプリ及びアプリストアをインストールすることを許容し、効果的に利用することを技術的に可能にしなければならない。またGKのCPS以外の方法で第三者アプリまたはアプリストアへアクセスできることを認めなければならない。そしてエンドユーザーが自身のデフォルトとして第三者アプリやアプリストアを設定することを妨げてはならない。ただし、ハードウェアやOS の完全性を危険にさらすことのないように手段を採ること、およびエンドユーザーのセキュリティ確保のための手段を採ることは否定されないが、これらの手段は比例的でGKによって正当化される必要がある。
同条1号は、具体的には、スマートフォンにデフォルトで設定されているアプリストア(App Store、Google Play)のほかのアプリストアをApple、Googleは認めるべきとする。デフォルト設定されているアプリストア以外のアプリストアからアプリをダウンロードすることをサイドローディングと呼ぶ。以前より、Googleはサイドローディングを認めてきたが、Appleは認めてこなかった。アプリストアはスマートフォンにネットワーク効果を生じさせる中心機能であるため、指定事業者および個別アプリ事業者5に対する影響は大きい。GK は、サービスの提供者とハードウェアの提供者に対して、無償で、効果的な相互運用または相互運用目的のアクセスを提供しなければならない。OS やバーチャルアシスタント経由でアクセスされるサービスやハードウェアに対して行われているアクセスや相互運用性と同程度でなければならない。
iPhoneではSiri、Android端末では通常、Google Assistantがデフォルト設定されている。購入後、利用者がサードパーティのボイスアシスタントをインストールしても、1) 起動方法について限定がある―デフォルトのものでは言葉で起動することができるが、サードパーティのものではアイコンのタップでしか起動できないなどがある。また、サードパーティのボイスアシスタントでは操作できる範囲に限定がある―iPhoneではテキストの読み上げ機能が使えないなどがある6。これらの差異をなくすことを2項は求めている。GK はエンドユーザーまたはビジネスユーザーに対して、識別サービス、ブラウザ、支払いサービス、アプリ内支払技術の利用・相互運用を強制してはならない。
8条1号が定めるのは、DMA5条7項のうち、アプリ内課金システムの利用強制についての規定である。これまではアプリ内でダウンロードした音楽やゲームなどの有料コンテンツの購入にあたっては、アプリストアの提供するアプリ内課金システムしか利用できなかったが、これを禁止するものである。GKは、ビジネスユーザーがGKのCPSで獲得したエンドユーザーに対して、CPSあるいは他のチャネルを利用して、GK のCPSでの条件と異なる条件で行うことも含め、エンドユーザーと通信し、勧誘を行って契約を締結することを無料で認めなければならない(DMA5条4項)。GKは、エンドユーザーが自社のCPS外でビジネスユーザーから取得したサービス、コンテンツ、定期購入(subscription)、購読物(features)その他のアイテムについて、自社のCPSで取得したアプリ経由での利用を認めなければならない(DMA5条5項)。
これまでアプリ外で音楽などをダウンロードでき、支払もできる事業者に対して、アプリ外で購入できることや価格をアプリ内で表示することを、アプリストアを運営する事業者は禁止していた(アンチステアリング条項という)が、8条2号はこれを禁止するものである。DMA5条4項、5項がこれに該当する。GKは個人情報の突合のためにGKの他のサービスにエンドユーザーをサインインさせてはならない。
具体的に同項はAppleのソーシャルログインに関する規定と考えられる。ソーシャルログインとは、アプリを利用する際のログインの方法に、Sign in with Apple(SIWA)という方法を選択肢に表示することを義務付けている8。このような行為により利用者がAppleに囲い込まれ、利用者の乗り換えリスクを減少させ、従って競争上の問題が生ずるおそれがある9。GK は GK 自身によって提供されるサービスや製品に関するランキングと、それに関連するウェブサイト索引付与と巡回(indexing and crawling)について、類似する第三者のサービスや商品より有利に取り扱ってはならない。GK はランキング付与等にあたって透明性、公平性および非差別的条件を適用しなければならない。
本条の前提とする状況は、検索エンジンの指定事業者が、検索サービスの提供者と、商品・役務の提供者の両方になる場合である。この場合に自社の提供する商品・役務を正当な理由がなく有利に取り扱うのは、競争として公正と言えないため、本条が設けられたものと考えられる。5――指定事業者の講ずべき措置
GK はビジネスユーザー(ビジネスユーザーにより権限を付与された者を含む)に対して、その要請により無償で、高品質、継続的かつリアルタイムの集計されたあるいは集計されていないデータへのアクセスおよび利用を提供しなければならない。このデータにはビジネスユーザーがCPSまたはCPSの付随サービスを利用するにあたって提供し、あるいは生成されたビジネスユーザーまたはビジネスユーザーと取引をしたエンドユーザーのデータを含む。なお、個人データはビジネスユーザーとの直接取引があり、かつエンドユーザーが情報共有に同意した場合に限り提供される。
書きぶりは違うが、いずれもビジネスユーザー(アプリ事業者など)が指定事業者のサービスを利用するにあたって生成されたデータを開示すべきとする規定である(10条1項関係)。GK はエンドユーザー(エンドユーザーにより権限を付与された者を含む)に対して、その要求により無償で、エンドユーザーにより提供された情報とエンドユーザーがCPSを利用することで生じた情報について、効果的なデータのポータビリティを可能にし、データポータビリティを促進するためのツールの提供、およびこれら情報への継続的でリアルタイムのアクセスを提供しなければならない。
11条はこれを参考としているが10、本法案では11条1項がiOSとAndroid間でのデータ移転、2項がアプリストア間でのデータ移転、3項がブラウザ間でのデータ移転をそれぞれ別途に定めている点が相違する。保険研究部 取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長
研究領域:保険
研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務
【職歴】
1985年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
2018年4月 取締役保険研究部研究理事
2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
2025年4月より現職
【加入団体等】
東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等
【著書】
『はじめて学ぶ少額短期保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2024年02月
『Q&Aで読み解く保険業法』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2022年07月
『はじめて学ぶ生命保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2021年05月