QE速報:1-3月期の実質GDPは前期比▲0.5%(年率▲2.0%)-内外需ともに落ち込み、2四半期ぶりのマイナス成長

2024年05月16日

(斎藤 太郎) 日本経済

● 1-3月期は前期比年率▲2.0%と2四半期ぶりのマイナス成長

本日(5/16)発表された2024年1-3月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比▲0.5%(前期比年率▲2.0%)と2四半期ぶりのマイナス成長となった(当研究所予測4月30日:前期比▲0.4%、年率▲1.6%)。

公的需要は増加したものの、物価高の下押しが続く中、不正問題発覚による生産・出荷停止で自動車販売が大きく落ち込んだことから、民間消費が前期比▲0.7%と4四半期連続で減少し、能登半島地震や自動車不正問題の影響などから設備投資も前期比▲0.8%と2四半期ぶりに減少した。輸出が前期比▲5.0%の減少となり、輸入の減少幅(同▲3.4%)を上回ったことから、外需も前期比・寄与度▲0.3%(年率▲1.4%)と成長率の押し下げ要因となった。自動車不正問題の悪影響は民間消費、設備投資、輸出と広範囲に及んだ。
 
名目GDPは前期比0.1%(前期比年率0.4%)と2四半期連続の増加となり、実質の伸びを大きく上回った。GDPデフレーターは前期比0.6%(10-12月期:同0.7%)、前年比3.6%(10-12月期:同3.9%)となった。国内需要デフレーターは前期比0.7%(10-12月期:同0.5%)と13四半期連続で上昇した。
2024年1-3月期の1次速報と同時に、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから過去の成長率が遡及改定された。実質GDP成長率は、2023年4-6月期が前期比年率4.2%から同4.1%へ、7-9月期が前期比年率▲3.2%から同▲3.6%へ、10-12月期が前期比年率0.4%から同0.0%へいずれも下方修正された。

この結果、2023年度の実質GDPは前年比1.2%(2022年度は1.6%)、名目GDPは前年比5.3%(2022年度は2.4%)といずれも3年連続のプラス成長となった。名目GDP成長率は1991年度(5.3%)1以来、32年ぶりの高さとなった。

2023年度の実質GDPは3年連続のプラス成長となったが、年度内成長率(2023年1-3月期から2024年1-3月期までの伸び率)は▲0.4%のマイナスとなった。日本経済は2023年度を通して停滞が続いたと判断される。
 
1 2015年基準支出側GDP系列簡易遡及による
<需要項目別の動き>
民間消費は前期比▲0.7%と4四半期連続の減少となった。新型コロナウイルス感染症が5類に移行してから1年が経過したが、民間消費は2023年度に入ってから低迷が続き、いわゆる「リベンジ消費」は顕在化していない。物価高による下押しが続いていることに加え、コロナ禍で高水準となっていた家計貯蓄率がほぼゼロ%となり(2023年4-6月期:0.5%、7-9月期:▲0.1%、10-12月期:▲0.3%)、貯蓄率の引き下げによる押し上げ効果が一巡したことも消費の停滞につながっている。さらに、不正問題発覚に伴う生産・出荷停止の影響で自動車販売が急減したことが消費を大きく押し下げた。

実質家計消費の内訳を形態別にみると、交通、外食、旅行、宿泊などのサービスは前期比1.0%と2四半期ぶりに増加し、被服・履物、家具などの半耐久財も同0.2%の増加となったが、自動車、家電などの耐久財が前期比▲12.2%と大きく落ち込んだほか、食料品などの非耐久財が同▲0.1%と4四半期連続で減少した。

雇用者報酬は、名目・前年比2.1%となり、10-12月期の同1.3%から伸びが高まった。実質雇用者報酬は、家計消費デフレーターの高い伸びが続いたことから、前年比▲1.0%(10-12月期:同▲2.0%)と10四半期連続で減少した。
 
住宅投資は前期比▲2.5%と3四半期連続で減少した。新設住宅着工戸数(季節調整済・年率換算値)は新型コロナウイルス感染症の影響が顕在化した2020年度入り後に80万戸程度まで減少した後、80万戸台後半までいったん持ち直したが、住宅価格上昇の影響などから2023年度入り後に弱い動きとなり、足もとでは70万戸台後半まで水準を切り下げている。
 
設備投資は前期比▲0.8%と2四半期ぶりに減少した。日銀短観2024年3月調査では、2023年度の設備投資計画(全規模・全産業、含むソフトウェア・研究開発投資額、除く土地投資額)が12月調査から▲1.9%下方修正されたものの、前年度比10.2%の高い伸びとなった。2024年度の当初計画は前年比4.5%となり、2023年度当初計画(前年度比4.4%)と同程度の伸びとなった。

設備投資は、高水準の企業収益を背景に基調としては底堅さを維持していると判断されるが、2024年1-3月期は自動車不正問題の影響で輸送機械関連投資が減少したことが響いたとみられる。
 
公的固定資本形成は、経済対策による国土強靭化関連工事の進捗などから、前期比3.1%と3四半期ぶりに増加した。
 
外需寄与度は前期比▲0.3%(前期比年率▲1.4%)と2四半期ぶりのマイナスとなった。輸出が前期比▲5.0%の減少となり、輸入の減少幅(同▲3.4%)を上回ったことから、外需は成長率の押し下げ要因となった。海外経済の減速に加え、不正問題発覚に伴う自動車の生産・出荷停止が自動車輸出の減少につながった。
20244-6月期は高めの成長に)
2024年4-6月期は、2024年春闘の結果を受けて名目賃金の伸びが高まる中、所得・住民減税による可処分所得の押し上げ効果もあり、民間消費が5四半期ぶりに増加すること、高水準の企業収益を背景に設備投資が増加に転じることなどから、現時点では年率2%台のプラス成長を予想している。1-3月期とは逆に、自動車の挽回生産が消費、設備、輸出と幅広い需要項目の押し上げに寄与することが見込まれる。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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