しぶといドル高圧力、一体いつまで続くのか?~マーケット・カルテ5月号

2024年04月19日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

月初1ドル151円台前半でスタートしたドル円は足元で154円台前半まで上昇している。雇用統計やCPIなど予想を上回る米経済指標が相次いだことで米利下げ観測が後退し、ドル高圧力が強まったためだ。この間、口先介入が続いたこともあり、政府・日銀による円買い介入への警戒感がドルの上値を抑え続けているが、介入が見送られる中でじりじりとドル高方向に押されている。

米経済は予想外に堅調で物価上昇圧力も根強いことから、FRBはしばらく利下げ開始に慎重な姿勢を維持するだろう。現在の見通しでは9月の利下げ開始を見込んでいるが、利下げが現実味を増してくると考えられる7月末のFOMCまたは8月下旬のジャクソンホール会合まではドル高圧力が強い地合いが続きそうだ。

一方、今後もファンダメンタルズ面で円を積極的に買う理由は見当たらないため、介入がドル円の展開を左右する。政府は他国との間で介入への地ならしを進めているとみられるうえ、節目である155円を超えると円安に一段と弾みがつく恐れが高いことから、その前後に達すれば介入に踏み切る可能性が高いとみている。

介入によって為替のトレンドを転換させることは困難だが、運営次第では円安を一時的に止めたり、ペースを緩やかにしたりする効果は期待できる。介入がカギとなるだけに不確実性は高いものの、3ヵ月後の水準は155円前後と見込んでいる。

なお、足元では中東の地政学リスクに対する警戒感が強まっている。この問題が一層緊迫度を高めた場合には、安全資産としての米国債買い(日米金利差縮小)というドル安圧力と、原油高に伴う米利下げ観測後退・日本の貿易赤字拡大観測という円安圧力が交錯してドル円は不安定化しやすいが、どちらかと言えば後者の影響が大きく出やすいだろう。

長期金利は月初0.7%台半ばでスタートした後、利下げ観測後退に伴う米金利上昇の波及により、足元では0.8%台前半に上昇している。この間、日銀の国債買入れ額が維持され、一定の金利抑制要因になっている。日銀はいずれ国債買入れの削減に踏み切ると目されるが、米金利上昇圧力が強い状況下での実施はリスクが高いため、しばらくは現状維持が予想される。このため、3ヵ月後の水準は0.8%台に留まると予想している(ユーロ円に関する記述は割愛)。
 
(執筆時点:2024/4/19)

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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