ユーロ圏消費者物価(24年3月)-コア指数も前年比2%台まで低下

2024年04月04日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:コア指数も2%台まで低下

4月3日、欧州委員会統計局(Eurostat)は3月のユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数】
前年同月比は2.4%、市場予想1(2.5%)から下振れ、前月(2.6%)から低下した(図表1)
前月比は0.8%、予想(0.9%)から下振れ、前月(0.6%)から加速した

【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数2
前年同月比は2.9%、予想(3.0%)から下振れ、前月(3.1%)から低下した(図表2)
前月比は1.1%、前月(0.7%)から加速した

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料も除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。

2.結果の詳細:物価上昇の勢いは前月に続き総じて加速

3月のHICP上昇率3(前年同月比)は全体で2.4%となり、2月の2.6%から低下した。「コア部分(=エネルギーと飲食料を除く総合)」も2月の3.1%から2.9%まで低下し、22年4月(2.9%)以来となる2%台となった。

以下、詳細を「コア部分」「エネルギー」「飲食料(アルコール含む)」の3つに分けて見ていく。

まず、コア部分である「エネルギーと飲食料を除く総合」の内訳を見ると、「エネルギーを除く財(飲食料も除く)」が1月2.0%→2月1.6%→3月1.1%と大幅な低下が続いている。一方、「サービス」(エネルギーを除く)は1月4.0%→2月4.0%→3月4.0%で、5か月連続で4%と、ここのところ横ばい圏での動きとなっている。また、2月までの費目別の上昇率は、総じて低下基調にあるが、外食・宿泊(2月5.3%)、その他財・サービス(2月4.2%)、教育(2月4.1%)がやや高めの伸び率となっている。前年同月比寄与度は、「財」が0.28%ポイント程度、「サービス」が1.65%ポイント程度と見られる。

コア以外の部分では「エネルギー」が前年同月比で1月▲6.1%→2月▲3.7%→3月▲1.8%とマイナス幅の縮小が続いている。エネルギーの前年同月比寄与度は▲0.22%ポイント程度と見られる。
「飲食料(アルコール含む)」は、前年同月比で2.7%(2月3.9%)と12か月連続で低下した(図表3)。飲食料のうち加工食品の伸び率は3.6%(2月4.5%)と低下傾向が続き、未加工食品は▲0.4%(2月2.1%)とマイナスに転じた。飲食料の前年同月比寄与度は0.59%ポイント程度(2月は0.79%ポイント)と見られる。

物価上昇の勢いをECBが公表する季節調整済系列で確認すると(図表4)、3か月移動平均後の3か月前比年率で総合指数が2.8%、コアが3.2%、エネルギーを除く財が1.3%、サービスが4.4%、飲食料が2.3%となった。飲食料を除き物価上昇の勢いは加速しており、エネルギーを除く財については2%を下回っているが総合指数やコアも2%を上回っている状況が続いている。
国別のHICP上昇率は、前年同月比で20か国中、上昇したのは10か国、残りの10か国は低下した(図表5)。また、6か国が物価目標の2%を下回っている。なお、前月比では20か国中18か国がプラスの伸び率となった(図表6)。
 
3 23年からはユーロ圏20か国のデータ、22年までは19か国のデータ(以降も特に断りがない限り同様)。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2002年 東京工業大学入学(理学部)
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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