民間投資家の気候変動対応型のブレンデッド・ファイナンスに対する関心は、2021年にグラスゴー金融同盟(GFANZ
7)が創設され高まりを見せている。
グラスゴー金融同盟は、前イングランド銀行総裁のマーク・カーニー氏が提唱した金融機関の有志連合であり、2050年までに温暖化ガス排出量のネット・ゼロを目指す企業の集まりである。銀行や保険、資産運用会社など、50ヵ国地域から650を超える金融機関が加盟し、加盟金融機関の総資産は、世界の民間金融資産の4割を占めるなど、国際社会や市場に対して大きな影響力がある。
グラスゴー金融同盟の傘下には、8つの独立した金融同盟があり、その中の1つに機関投資家で構成されるネット・ゼロ・アセット・オーナー・アライアンス(以下NZAOA
8)がある。NZAOAは、2019年に国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEPFI
9)と、国連責任投資原則(PRI
10)によって発足した国際的なイニシアチブであり、メンバー企業はそれぞれ、2025年に22%~32%、2030年に40%~60%の範囲で、二酸化炭素排出量を削減する目標を掲げ、ポートフォリオの排出削減に取組んでいる。
NZAOAはブレンデッド・ファイナンスに関して、新興国および発展途上国への投資を拡大し、気候変動対策における資金不足を埋める手段になると考えており、各国政府・関連機関に政策的支援を拡大するよう主張している。加えて、ブレンデッド・ファイナンスは、先進国市場においてもクリーン・テクノロジー・インパクト投資分野で、機関投資家のリスク・リターン・ニーズを満たし、投資規模を拡大するうえで有用であることも指摘している
11。
メンバー企業は、NZAOAの理念に沿った投資行動を取ることから、民間投資家のブレンデッド・ファイナンスへの資金供給が増えていくことが期待される。
7 正式名称「Glasgow Financial Alliance for Net Zero」。
8 正式名称「Net-Zero Asset Owner Alliance」。
9 正式名称「United Nations Environment Programme Finance Initiative」。
10 正式名称「Principles for Responsible Investment」。
11 NZAOA「Scaling Blended Finance UN-convened Net-Zero Asset Owner Alliance Discussion Paper」(2021年11月)
5――気候変動対応型ブレンデッド・ファイナンスの広がり