1.ビジネスの柔軟性の向上
1-1.会社がMAポートフォリオに保有できる投資の範囲を拡大
HPキャッシュフローを持つ資産が許容されることに伴い、一定の条件下で、コーラブル債券(期限前償還条項付債券)や建設段階のインフラ資産等が新たに対象になることになる。また、以前に MA 適格にするために証券化された資産(特にエクイティリリース住宅ローン)が、証券化という厳格な手順を経ることなく適格となり、他の資産は証券化することで「HP適格」になる可能性もある。ただし、「HP適格」資産の10%という上限に加えて、会社はHP資産に関連する再投資と流動性リスクに関して追加の「マッチングテスト」を実行する必要がある。また、HP 資産の基本的なスプレッドに、キャッシュフローの固定性の欠如に対する引当金をどのように含める必要があるかに関する特定のルールもあり、これにより、請求できる MAベネフィットが実質的に制限される。
1-2.MAを請求することができる保険契約の種類を拡大
これまでは、年金負債のみがソルベンシーIIのMA 適格性に関する厳格な要件を満たしていたが、PRAはこれを修正し、類似のリスクプロファイルを有する、支払中の所得保障負債と有配当年金の保証給付部分(非保証部分は対象外)をMAポートフォリオに含めることを提案している。
1-3.SIG資産(非投資適格資産)から請求できるMAの額の制限を撤廃
現在、SIG資産はMAポートフォリオの保有総額の1%を占めている。SIG資産に対する MAベネフィット制限の撤廃によって、投資適格と非投資適格の境界付近及びそれ以下での投資が促進されるほか、会社が格下げされた資産を下落市場に売却しなければならない場合のプロシクリカル効果も防止できる。
2.リスクレベルへの対応を強化
2-1.リスクに比例した、適切な資産範囲の合理化されたMA申請プロセスを確立
新しいアプローチでは、許可を与える前にMAの適格条件に照らして評価され、MAの進行中の申請に関連する他の要素の評価は、MAの許可が与えられた後まで延期され、PRAの会社に対する継続的な監督の一部として実施される場合がある。申請が明らかにMA適格条件に沿っている場合、より複雑ではない変更を提案している場合、又は会社が適切なセーフガードを提案している場合に、このアプローチが適していると想定されることになる。
2-2.MA条件の違反に対する規制上の取扱いをより均衡のとれたものにする
現在は、MAの承認を得ている会社は、資格規定に違反した2か月後に規制当局がMAの承認を取り消すことになっている。PRAは、MAベネフィットの完全喪失によるクリフ効果を取り除くことを提案しており、「それでも、適格条件に違反した会社が利用できるMAベネフィットを削減することで、タイムリーな管理と違反の是正を奨励する」ことになる、と述べている。
2-3.必要に応じて、格付による会社の資産の信用の質の違いを反映するめに、FS(ファンダメンタル・スプレッド)の細分性を高める。
PRAは、FSをより詳細なものにする、つまり資産の格付け文字だけでなく格付けノッチに応じてMAベネフィットを調整する。これに伴い、この分野における PRAの以前の期待がルールに変換されていくことになり、信用格付けの内部評価を利用している会社は、自社の資産に対して、異なるFSを提案する機会を得ることができることになる。
3.会社のリスク管理責任の強化
3-1.請求されるMAベネフィットの証明プロセスを導入
よりリスクの高い資産を MA ポートフォリオに導入するため、上級マネージャーが請求される MA ベネフィットの額に対して責任を負うことになる。満たさない場合は、既存の上級管理職制度の下で罰せられることになる。PRAは、上級マネージャーは、「会社の財務情報と規制報告の作成と完全性に対する所定の責任」を有する人物として、CFOが該当する可能性が高いことを示唆している。
3-2.SIG資産のリスク管理に関する期待事項を明確化
PRA は、SIG 資産への投資は慎重なレベルであるべきであるという期待を導入する。PRAはさらに、これを評価する際に、市場環境の悪化により保有する投資適格資産がSIGに格下げされ、ポートフォリオにおけるSIG資産の集中がさらに高まる可能性がある範囲を会社が考慮するよう提案している。 PRAはPPP に沿って、会社は投資適格エクスポージャーの資産と比較して、これらの資産に結び付いている追加リスクを特定、測定、監視、管理、報告できる効果的なリスク管理システムを導入している場合にのみ SIG 資産に投資すべきであると考えている。
3-3.会社がMAポートフォリオの資産と負債についてPRAに提出するデータを形式化
PRAは新しいMALIR(MA資産負債情報報告書)を使用して、MAポートフォリオの資産と負債に関して、資産タイプ、各資産が生成するFSやMA、資産キャッシュフローに関する情報等を収集する。保険会社は2024年末から、MAポートフォリオ毎に作成される個別のMALIRの提出を、会計年度終了後130日営業日までに提出することが求められる。ただし、会社の規模やMAポートフォリオ資産の性質等を考慮して、一定の場合にMALIRの提出義務を免除する。
3-4.内部信用評価に関する期待を要件に転換
PRAは、MA規制により、関連する資産ポートフォリオにおける内部信用評価が、外部信用格付によるものと同等であることを要求されることを期待している。内部信用評価が満たさなければならない新しい要件は、そのような評価を行う際に考慮されるべきリスク、信用格付機関(CRA)から生じる可能性のある発行格付との比較、適切な検証と外部保証の必要性をカバーする。
3-5.会社がPPP(プルーデントパーソン原則)を遵守していることを証明できるようにするためのMA適格条件を導入
全ての会社はPPPを遵守することが求められているが、PRAルールブックの投資編におけるPPP要件とMA適格条件との関連は明確ではない。PRAは、規制上の貸借対照表と規制上の資本目的の両方、すなわちBELとSCRの両方の重要な削減のためのMAポートフォリオ内の資産の異なる扱いを考慮すると、MA申請にこの要件を導入することが重要であると考えている。
5―利害関係者の評価と反応等