中村 亮一()
研究領域:保険
研究・専門分野
4―PRAによるソルベンシーIIのレビューに関する第2弾の協議文書の公表
1.ビジネスの柔軟性の向上
1-1.会社がMAポートフォリオに保有できる投資の範囲を拡大
固定キャッシュフローを持たない資産を含めることを可能にする明確な枠組みを提供する。これらの改革は、保険契約者に生じるリスクに対する保護措置によって可能になる。この改革は、保険会社が建設段階の資産を含むより広範な長期的で生産性の高い資産に投資するインセンティブを高める。これらの変更には、会社が(固定キャッシュフローではなく)予測可能性の高い(highly predictable:HP)キャッシュフローを持つ資産に投資できるようにする提案が含まれる。ただし、これらの資産の追加リスクに対する引当金が適用され、HPキャッシュフローを持つ資産からのMAベネフィット(MA適用に伴う資本の削減効果額)の合計が、請求されたMAベネフィット全体の最大10%であることが条件となる。PRAは、これによりMAの資産と負債のキャッシュフローが緊密に一致することが保証され、2022年11月の声明(MAポートフォリオの資産の大部分が固定キャッシュフローを維持することを含む)に沿っている、と考えている。
1-2.MAを請求することができる保険契約の種類を拡大
より多くの保険債務がMAの恩恵を受けることができるようにする。この改革は、資産と負債のキャッシュフローの緊密なマッチング等の優れたリスク管理慣行に対するインセンティブを高め、会社の安全性と健全性を促進し、競争力と成長を促進する。
1-3.SIG(sub-investment grade:非投資適格)資産23から請求できるMAの額の制限を撤廃
投資資産とSIG資産の境界に近い、又は境界よりも低い投資を促進する。
2.リスクレベルへの対応を強化
2-1.リスクに比例した適切な資産範囲の合理化されたMA申請プロセスを確立
これにより、一部のMA申請の効率が向上し、投資機会が発生した場合に会社がより迅速に行動 できるようにし、規制上の負担を軽減する。
2-2.MA条件の違反に対する規制上の取扱いをより均衡のとれたものにする
これにより、より柔軟で均衡のとれた結果をもたらす。この改革は、MAベネフィットの全体的な損失というクリフ効果24を取り除くが、適格条件に違反した会社が利用できるMAベネフィットを削減することにより、違反の適時管理と是正を促す。
2-3.必要に応じて、格付による会社の資産の信用の質の違いを反映するめに、FS(ファンダメンタル・スプレッド)25の細分性を高める。
技術的準備金(TP)の計算に使用されるFSのリスク感応度を向上させるとともに、会社にアプローチの柔軟性を与えることにより、実用的かつ比例的なものとなる。
3.会社のリスク管理責任の強化
3-1.請求されるMAベネフィットの証明プロセスを導入
会社が自らの資産ポートフォリオのリスクに十分なFSを備えたMAを所有し、その説明責任を果たすことを保証するために、請求されるMAベネフィットの証明プロセスを導入する。これにより、既存のFSが単一のセクター全体の規制モデルによって決定されることによるシステミックリスクが軽減され、この単一モデルと会社が行っている、そして今後行うであろう幅広い投資との間の潜在的なミスマッチが軽減される。この提案は、会社が従うことができる比例的なプロセスを概説し、MAの基礎となる主要な前提に関するPRAの見解を明確にすることで、PRAの認証に対する期待の透明性を提供する。
3-2.SIG資産のリスク管理に関する期待事項を明確化
適切なリスク管理を促進し、投資の自由度を高める。これらの期待事項は、キャッシュフローの性質を十分に考慮し、PPP(プルーデントパーソン原則)を継続的に遵守し、関連する内部モデルの調整が適切であることを含む。
3-3.会社がMAポートフォリオの資産と負債についてPRAに提出するデータを形式化
資産の種類とそれらから生じるMAベネフィットの額に関するより構造化された定期的な情報を収集するために、新しいMALIR(MA資産負債情報報告書)を使用する。これにより、PRAは、MAポートフォリオの規模と性質の経時的な変化をより深く理解し、会社に確実性を提供し、アドホックなMAデータ要求に関連する潜在的な負担を軽減しながら、その主要な目的に対して最大のリスクをもたらす分野に監督活動を集中する能力をサポートできる。
3-4.内部信用評価に関する期待を要件に転換
この領域において、政府が予定している法律の新しい構造を補完し反映させる。具体的には、SS3/17(ソルベンシーII:非流動性無格付資産)の内部信用評価に関する既存の期待値がPRAルールになる。これは、PRAの監督アプローチの変更や会社の追加的な負担につながることを意図したものではない。
3-5.会社がPPP(プルーデントパーソン原則)を遵守していることを証明できるようにするためのMA適格条件を導入
会社がMAポートフォリオに保有される資産の適合性とリスクをどのように評価したかを示す。