中村 亮一()
研究領域:保険
研究・専門分野
2―財務省による保険及び再保険会社(健全性要件)規制案の公表
3―PRAによるソルベンシーIIのレビューに関する協議文書の公表
1.TMTPの計算の簡素化とプロセスの改善
会社が2032年の移行措置の終了に向けて効果的に計画することを確保しつつ、会社のコストと複雑さ(従来のソルベンシーIモデルの維持にかかるコストを含む)を削減する。これらの提案は、現在TMTPの承認を受けている24の生命保険会社と、既にTMTPの恩恵を受けている業務を受け入れた後に将来TMTPの許可を与えられる全ての会社に利益をもたらす。
2.保険会社が自己資本要件を計算するために使用する内部モデル(IM)に関する新しい合理化された一連の規則
現在の枠組みの下で会社が満たさなければならない規範的要件の数を削減しながら、堅牢な基準を維持するように設計される。代わりに、より少数の原則に基づく要件に関する監督上の判断の適用に焦点が当てられる。例えば、PRAは、モデル化基準を評価するためのより原則に基づくアプローチに移行することを提案しており、これにより、会社がIMの承認を得るためにこれまで満たさなければならなかった詳細な要件の大部分を削除することができ、会社の柔軟性が高まり、会社とPRAのモデル化の許可と承認に対するより動的なアプローチにつながる。PRAは、残余制限のあるIMsを拒否するのではなく、適切な水準の健全性を維持するために、必要に応じてモデル化の許可を付与することを支援する、残余資本アドオンツールとモデル使用要件という、2つの新しいセーフガードを提案している。これらの提案は、PRAから既にIMの承認を受けている全ての保険会社15、及び将来的に許可申請を検討している他の保険会社に利益をもたらす。
3.グループソルベンシーの計算における保険グループの柔軟性を向上
グループ IMsの開発における柔軟性を高め、グループの潜在的なリスクをより適切に反映できるようにする。PRAは、これらの改革が効果的な競争を促進し、子会社買収時の非効率な一時的なコスト増加を排除するなど、高水準の保険契約者保護を維持しながら英国の保険部門の競争力を高めると考えている。これらの提案は、PRAがグループ監督を務める英国の保険会社に利益をもたらす可能性がある。
4.英国内で営業する国際的な保険会社の支店に対する特定の要件の削除
英国保険部門の参入・拡大と競争、及び国際競争力を促進する。支店が法人全体から独立して破綻することができないことを考えると、PRAは、支店の資本要件と支店のリスクマージンは、英国内で営業する支店の安全性と健全性を支える効果的なツールではないと判断する。この提案は、ロンドンの法人保険市場で営業する損害保険会社や再保険会社など、様々なビジネスモデルで現在英国内において営業している130以上の国際的な保険会社の支店に利益をもたらす。
5.報告要件の合理化と削除
比例性を高め、複雑さを軽減するために、PRAが英国の保険部門には必要ないと考える報告要件の合理化と削除を行う。この提案は、実施コストといくつかの限られた新しい報告提案を考慮した上で、中期的に報告要件の全体的な削減と会社のコスト削減につながる。これは、PRAが報告要件を削減し、PRAが英国で活動する保険会社を監督するために必要な情報を確保する報告パッケージに到達するために、既存の権限の下で既に取ってきた以前のステップを基にしており、会社の全体的なコストと報告負担を軽減している。これらの提案は、一定の範囲で全ての保険会社に利益をもたらす。特に、RSR(定期監督報告)の削除提案は、保険グループと国際保険会社の英国支店にとって、より大幅な削減となる可能性が高い。
6.新しい「動員」16制度
新規保険会社の参入と拡大を促進し、競争と英国保険部門の国際競争力と成長を促進するための新しい「動員」制度を導入する。提案によると、PRAは新たな保険会社に対し、業務制限とそれに比例した規制要件の下で業務を行いながら、システムやリソースを構築するために一定期間の追加期間を利用するオプションを提供する。この提案により、PRAは動員化の際に最低資本要件を引き下げることができる。これらの提案は、現在又は将来、英国で保険会社としての認可申請を検討している会社に利益をもたらす可能性がある。
7.規模の臨界値の引き上げ
小規模又は新規の保険会社の比例性を高めるために、小規模保険会社がソルベンシーIIの適用対象となるために必要とされる規模の臨界値を引き上げる。この提案は、現在又は将来において、現在の臨界値に近くなる可能性がある小規模保険会社に利益をもたらす。