改正ベトナム保険事業法(5)-生命保険・医療保険(その1)

2023年11月29日

(松澤 登) 保険会社経営

■要旨

2023年1月施行の改正ベトナム保険事業法の解説の5回目である。今回は生命保険契約・医療保険制度の1回目である。ポイントは3点である。
 
1点目は、生命保険契約・医療保険契約においては、保険契約者と被保険者の関係が親族であるか、雇用関係や経済的関係があるなどの保険加入を正当化できる関係であることを求めることである。生命保険加入には被保険者同意を求めるので、純粋な親族主義ではないが、特徴的である。
 
2点目は、クーリングオフが保険証券受領後21日間も行使が可能なことである。ただし、対象となる保険契約は10年以上の保険期間を有する契約に限定され、かつ保険企業等が必要なコストを控除することが可能となっている。
 
3点目は、生命保険契約加入時に、生命保険契約が成立又は不成立となるまでの間に暫定保険を締結しなければならないことである。生命保険契約が不成立であった場合でも暫定保険期間内に事故が発生した場合には暫定保険の保険金が支払われるものと思われ、特徴的な制度である。

■目次

1――はじめに
2――生命保険契約・医療保険契約の保障対象等(33条~34条)
  1|生命保険契約・医療保険契約の保障対象(33条)
  2|生命保険契約・医療保険契約で保障可能な利益(34条)
3――保険契約加入時の取扱い(35条~37条)
  1|保険契約加入時の考慮期間(35条)
  2|生命保険の暫定保険(36条)
  3|保険料の支払(37条)
4――保険金支払いと第三者(38条)
5――おわりに

保険研究部   専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登(まつざわ のぼる)

研究領域:保険

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

経歴

【職歴】
 1985年 日本生命保険相互会社入社
 2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
 2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
 2018年4月 取締役保険研究部研究理事
 2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
 2024年4月より現職

【加入団体等】
 東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
 東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
 大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
 金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
 日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等

【著書】
 『はじめて学ぶ少額短期保険』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2024年02月

 『Q&Aで読み解く保険業法』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2022年07月

 『はじめて学ぶ生命保険』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2021年05月

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