本章では、回帰計算の結果を確認していく。
1|死亡数 : 回帰計算結果は、死亡数実績を概ね再現できている
まず、全体の死亡数の推移をもとに、過去の実績の再現がどの程度できているか、を見ていく。
回帰計算によって得られた死亡率をもとに、死亡数を計算する。その上で、男性・女性・男女計の各地域区分ごとおよび日本全国について、死亡数の過去の実績と回帰計算の結果を比較してみると、23~28ページの「死亡数 実績・回帰比較」のとおりとなった。
各地域とも、長期的には、死亡数の実績と回帰計算の結果は、緩やかな右肩上がり示している。1971年以降の各年について、概ね、両者は近接している。2021年の日本全体(男女計)は、実績143.9万人に対して回帰計算結果143.2万人(対実績 -0.5%)となっている。回帰計算結果は、死亡数実績を概ね再現できていると言える。
ただし、近年、男性は回帰が実績をやや上回り、反対に、女性は回帰が実績をやや下回っている。これは、男性に多い新生物で、回帰式が実績死亡率の低下を再現できていないこと。女性に増えている異常無(老衰等)で、回帰式が実績死亡率の上昇を再現できていないこと、が主な原因と見られる。
なお、当然ながら、1995年の阪神淡路大震災による近畿での死亡数、2011年の東日本大震災による東北での死亡数といった、震災等による突発的な死亡数の増加については、回帰計算は再現できていない。
2|死亡率 : 回帰計算結果は、死亡率実績も概ね再現できている
つぎに死亡率の推移を見てみる。図表の数が膨大となるため、代表年齢群団として80~84歳をとり、男性・女性について、死因別に実績と回帰計算結果を比較してみると、29~52ページの「死亡率 実績・回帰比較」のとおりとなった。
(1) 男女別
男女別に見たときに、実績死亡率の再現に大きな差異は見い出せない。ただし、男性や、関東甲信、東海、近畿の女性では、2010年代後半以降に見られる新生物の実績死亡率の低下が再現できていない。また、男性や、北海道、関東甲信の女性で、2010年代後半以降に見られる呼吸器系疾患の実績死亡率の低下が再現できていない。
(2) 年齢群団別
稿末の図表にはないが、若齢では、異常無(老衰等)の死因で、実績データが少なく、回帰計算結果と実績の乖離が見られるケースがある。高齢では、両者の乖離は小さくなっている。
(3) 死因別
死因別には、循環器系疾患や外因(熱中症含)の再現が比較的よくできている。
一方、新生物では、男性で1990年代、女性で1980年代に見られる実績死亡率の上昇変動が再現できていない。また、男性や関東甲信、東海の女性で、2010年代後半以降に見られる実績死亡率の低下が再現できていない。
呼吸器系疾患では、1990年代までに見られる実績死亡率の突発的な上昇変動が再現できていない。また、男性や、北海道、関東甲信の女性では、2010年代後半以降に見られる呼吸器系疾患の実績死亡率の低下が再現できていない。
異常無(老衰等)については、2010年代以降の上昇傾向が表現できていない。
なお、外因(熱中症含)の実績については、阪神淡路大震災や東日本大震災震災の跳ね上がりが各地域区分で生じている。これは、月別の死亡数の計算の際に、人口動態統計下巻第3表から得られる日本全国の数値をもとに、当該月の割合を掛け算していることに起因している。大震災のあった年には、死亡数が多かった震災から数ヵ月間に死亡が偏るような形で、按分処理をしているためである。年間を通じてみれば、死亡数や死亡率は実績とほぼ一致している。
(4) 地域区分別
地域区分別には、北海道から九州南部・奄美まで、概ね再現がよくできている。ただし、上述の通り、一部の地域区分では、近年の実績死亡率の低下が再現できていない箇所もある。沖縄については、他の地域区分と比べて人口が少なく、実績死亡率の変動が大きいため、回帰計算結果と実績の乖離がやや目立つ形となっている。
総じて、回帰計算結果は、死亡率実績も概ね再現できていると言える。
7――回帰式を用いた試算