非保証要素の活用-金利上昇に対応するための保険価格設定とは?

2023年05月30日

(篠原 拓也) 保険計理

■要旨

アメリカの保険会社では、過去の金利上昇時に、価格設定に長期保証を行うことのリスクを踏まえて、非保証要素(non-guaranteed elements, NGE)を保険商品に組み込む動きが進んだ。これは、基礎率の保証をせずに当初の保険料を下げるとともに、金利低下等の環境変化に応じて価格を見直すことのできる仕組みといえる。2022年11月に、アメリカのアクチュアリー会研究所は、NGEの概要に関する報告書を公表している。本稿では、それをもとにNGEについて見ていく。

■目次

1――はじめに
2――NGEの経緯
  1|長期保証の困難さが認識された
  2|デジタル環境の整備が始まった
  3|NGEを組み込んだ商品設計が進んだ
3――NGEの特徴と種類
  1|付与加算利率 (credited interest rate) : 獲得した運用利回りの成果を上乗せ
  2|保険料ローディングとその他経費徴収 (premium loads and other expense charges)
   : 事業費徴収を調整
  3|保険費用徴収 (cost of insurance charges) : 死亡率の変化に応じて保障コスト徴収を調整
  4|指数パラメータ (index parameter)
    : 指数連動型年金等のアカウントバリューをコントロール
  5|ボーナス (bonuses) : 商品価値を上乗せ加算
  6|特約徴収 (rider charges) : 変額年金の保証特約の対価徴収を変更
  7|不確定保険料 (indeterminate premiums) : 保証なしの保険料率を規定
4――NGEの規制と専門職ガイダンス
  1|NGEには募集文書上の規制が課されている
  2|NGEに関するアクチュアリーのガイダンスがある
5――実務上の問題
  1|利用可能な情報が限られる
  2|業界標準が確立していない
  3|実装に負荷が伴う
6――おわりに (私見)
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