方向感を失った円相場~長引く円安の行方

2023年05月09日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■要旨
 
  1. ドル円は、1月に127円台後半を付けてから一進一退となっており、歴史的な円安が長引いている。円高の動きが止まり、ドル円が方向感を失った要因としては、まず、米金融政策を巡る市場の見方が交錯して定まらないことが挙げられる。米物価上昇の粘着性を巡る不透明感が強くなっていることに加え、金融システム不安が台頭したことが米金融政策に対する不透明感を強めた。また、植田新総裁就任後の日銀金融政策に対する市場の見方が揺れ動いたことも一因となっている。日米金融政策の先行きに対する見方が定まらず、日米金利差が方向感を失ったことがドル円の方向感喪失に繋がった。
     
  2. 先行きに目を転じると、ドル円は日米金融政策の方向感が定まるにつれて、緩やかに円高ドル安に向かう蓋然性が高いと考えられる。まず、米金融政策については、今月を最後に利上げが打ち止めとなり、物価上昇率の低下に伴って、来年年初から利下げが開始されると予想している。米銀の融資が減少に向かうと見込まれることも物価の抑制に寄与する。他方、日銀の金融政策については、今年7月に副作用の是正を目的とした修正が実施されると見込んでいる。これらの動きを反映して日米金利差が今後縮小傾向となり、円高ドル安の原動力になると見ている。一方、原油価格が今後やや上昇し、日本の多額の貿易赤字が続くことなどが、円高の進行ペースを抑制すると見ている。
     
  3. ただし、予見可能性が低い材料が多いこともあり、見通しの不確実性が高めであることも否めない。頭の体操として円安が長引くリスクシナリオを考えてみると、(1)米物価上昇が粘着質であったり、金融システム不安の影響が限定的に留まったりして、FRBが利上げを再開するケース、(2)植田日銀が現行のまま緩和を長期継続するケース、(3)原油価格が急騰して、米利上げ再開や日本の貿易赤字拡大に繋がるケースなどが挙げられる。

 
■目次

1. トピック: 方向感を失った円相場、長引く円安の行方
  ・ドル円が方向感を失った理由
  ・長引く円安の行方
2. 日銀金融政策(4月)
  ・(日銀)現状維持(ただし、FGを修正・レビュー実施を決定)
  ・受けとめと今後の予想
3. 金融市場(4月)の振り返りと予測表
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

レポートについてお問い合わせ
(取材・講演依頼)