ユーロ圏失業率(2023年3月)-労働市場は堅調な状況が継続

2023年05月08日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:失業率は6.5%にやや低下

5月3日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏の失業率を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏失業率(20か国、2023年3月、季節調整値)】
失業率は6.5%、市場予想1(6.6%)より下振れ、前月(6.6%)から低下した(図表1)
失業者は1089.8万人となり、前月(1101.7万人)から11.9万人減少した

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:労働市場は堅調な状況が継続

ユーロ圏(20か国)の3月の失業率は6.5%で、2月(6.6%)からわずかに低下し、統計データ公表以来の最低値を更新した。また、過去データの改定による変更はほとんどなかった。

失業者数は3月の前月差で11.9万人減となり、22年12月以降4か月連続で減少した(図表3・4)。主要4か国のすべてで失業者数が減少、減少幅が大きい順にイタリア(▲2.1万人)、ドイツ(▲1.8万人)、フランス(▲1.8万人)、スペイン(▲1.6万人)だった。

3月の若年失業率は14.3%で、2月(14.4%)からわずかに減少した(図表2)。若年失業率は22年5月(14.0%)をボトムに一時やや悪化したが、足もとでは再び14%台前半で推移している。また、また若年失業率も過去データの改定による変更はほとんどなかった。

若年失業者数は3月で223.9万人(前月差▲1.4万人)と減少した。若年失業者数はコロナ禍後の最低値(213.0万人、22年2月)を上回る状況ではあるが、コロナショック直前の水準は下回っている(図表4)。
国別の3 月のデータを見ると、失業率はデータが公表されている20 か国中、悪化した国が2 か国、改善が13 か国、横ばいが5 か国だった(図表5)。また、若年失業率は20 か国中、悪化した国が4 か国、改善が12 か国、横ばいが4 か国だった(図表6)。多くの国で失業率には改善傾向が見られている。
最後に詳細な月次データを公表しているイタリアとポルトガルについて確認すると、イタリアは失業者が減少、非労働力人口がほぼ横ばいで就業者が微増した。ポルトガルは失業者と非労働力人口が減少、就業者が増加した(図表7・8)。いずれの国でも、労働参加率はコロナ禍前を上回る高水準で維持されており、引き続き労働市場が底堅いことがうかがえる。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2002年 東京工業大学入学(理学部)
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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