法は開示すべき情報として、(1)商品提供条件等が自社とその他の利用事業者とが異なる場合にはその内容と理由を、同様に(2)商品提供条件等が関連会社とその他の利用事業者で異なる場合もその内容と理由を開示すべきとしている(法5条2項1号ト、規6条2号・3号)。すなわち、おなじ土俵であるのに自社又は自社の関連会社のみを優遇する行為にかかわるものであって、以下ではまとめて自己優遇として表記する。
透明性評価を見ると、論点として取り上げられているのは、「違反行為に対する措置」「商品等の表示順位」「利用事業者の事業活動に関するデータ利用」の3点である
2。ひとつめの「違反行為に対する措置」について合理的な理由なしに取り扱いの差異をつけることの不当性には議論の余地がないものであるため、以下では「商品の表示順位」「利用事業者の事業活動に関するデータ利用」について述べることとしたい。
自社優遇については、ヤフーが「商品等の表示順位」において、自社理念を共有するグループ事業者を優遇する可能性があるとしている一方で、利益相反及び自社優遇行為に関する管理方針を策定し、公開し、問い合わせ先も明示し、不断の見直しを行うという取り組みを行っている>との報告を行った
3。その他のDPF提供者からの報告では「商品等の表示順位」「利用事業者の事業活動に関するデータ利用」において自社優遇は一切行っていないとする。
しかし、透明性評価はヤフーの取組等を高く評価するとする一方で、全体として「利用事業者のみならず、有識者をはじめとした世の中の懸念を払拭していくことが重要である」と注意を喚起し、「自社及び関係会社の優遇の有無、自社優遇がある場合はその正当性について、客観的に検証できるようなかたちで情報開示や体制整備を進め、その内容を説明していくことを期待する」と批判的な見方をする
4。
ところで「商品等の表示順位」「利用事業者の事業活動に関するデータ利用」については、Amazonに対して欧州委員会が法的な手続きを進め、これに対してAmazonが嫌疑の向けられた行為を行わない旨の確約計画を提出している
5。
欧州委員会は、まず「商品の表示順位」に関して、目立つ位置に配置され、購入されやすいというメリットがあるBuy Box(Featured Offerとも呼ばれる)欄に、自社あるいは自社の保管・運送サービス (Fulfilment By Amazon、FBA)を契約しているFBA第三者販売業者を合理的理由なく優先的掲載しているとの暫定的評価(preliminary assessment)を下していた。
また欧州委員会は「利用事業者の事業活動に関するデータ利用」について、Amazonは第三者販売業者のデータを、Amazon自社販売のために利用していた点について、異議告知(Statement of Objection)
6を行っていた。
Amazonの確約計画はこれら欧州委員会の暫定的評価と異議告知について対応をするものである。具体的には、「商品等の表示順位」に関しては、Buy Boxへの掲載基準にはFBA第三者販売業者であるかどうかを含めないこととし、目立つ位置(Buy Box)への掲示は必ず性格の異なる二種類の商品を掲示するものとした。他方、「利用事業者の事業活動に関するデータ利用」については今後行わないと確約した。
このように欧州においてはAmazonの確約計画の動きがあったが、今回の日本におけるAmazonの報告書との関係がどのようなものかは必ずしも明らかではない。すなわち欧州での取り扱いを日本でも実施するのか(したのか)は明確でない。
また、ここまでAmazonだけを取り上げてきたが、他のDPF提供者も表面に現れない取扱いも含めて自社優遇を行っていないのかどうか懸念が残る
7。その意味ではDPF提供者に対して批判的である透明性評価の表現ぶりもうなずけるところである。