マイナンバーカードの申請数が8100万件を超え、マイナンバーカードの交付数はまもなく運転免許証を超える見込みだ
2。2022年度末までに、ほぼ全ての国民への交付を目指す政府目標にはまだ遠いようにも思えるが、日本で最も普及する本人確認書類となることは、ほぼ間違いない。今後はマイナンバーカードの更なる普及促進と同時に、既に取得した人の利便性も高めるフェーズに入っていくと考えられる。
こうした中で、2023年は、利便性拡大の年になりそうだ(図3)。2023年2月以降、転出届やパスポートのオンライン申請が始まり、5月からはAndroid OS
3のスマートフォンにマイナンバーカード機能が搭載可能になる
4。こうした中で筆者は、今後の利便性に関する注目点は主に2点あると考えている。一つはマイナポータルの普及、もう一つは健康保険証廃止の議論の行方だ。
国民にマイナンバーカードの利便性を実感してもらうには、マイナポータルの普及が重要だ。マイナポータルとは、政府が運営する行政手続き用のオンラインサービスを指す。先述のオンライン申請や、Android OSでのマイナンバーカード機能の利用にはマイナポータルへの登録が前提となる。
マイナポータルについては、既にe-Taxを用いた確定申告等で活用が始まっているが、まだ国民生活に浸透したサービスにはなっていない様である。ニッセイ基礎研究所の2022年9月調査によれば
5、マイナンバーカード取得者のうち、マイナポータル内サービスの利用経験がある割合は16.7%であった。また、今後マイナポータルを利用してみたいと答えた人は、取得申請中の人を含めた全体のうち23.5%に留まっている。
昨年には、マイナポータルの利用規約の免責事項が物議を醸し、修正された。利用者に損害が生じた場合に、デジタル庁は「一切の責任を負わない」とする規約が無責任と批判されたのだ。マイナポータルはデジタル社会のハブともいえる存在だが、その定着に向けてどこまで機能を拡大させるか、今後の展開に期待したい。
加えて、健康保険証廃止の議論(マイナ保険証
6への一本化)も注視すべきだろう。先述の通り、マイナンバーカードは、特に医療機関受診の必要性が高い14歳以下や90代以上への普及が進んでいない。2024年度秋に予定される健康保険証の廃止までに、この層を含めた一層の普及促進策や、マイナ保険証未取得であっても受診に支障が出ない仕組みを作る必要があり、現在、デジタル庁の「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会
7」で議論が行われている。