米インフレの高止まりリスク-インフレはピークアウトも低下スピードは鈍化傾向、インフレ抑制のためには景気後退不可避の可能性

2023年02月27日

(窪谷 浩) 米国経済

■要旨
 
  1. 米国の消費者物価指数(CPI)は総合指数が23年1月に前年同月比+6.4%と、およそ40年半ぶりの水準となった22年6月の+9.1%からの低下基調が持続したものの、足元で低下スピードが鈍化。
     
  2. CPIの内訳は、食料品価格、コア財価格で低下したものの、足元でエネルギー価格が上昇したほか、コアサービス価格の上昇基調が持続し、物価を押上げ。
     
  3. エネルギーや食料品価格は今後のウクライナ侵攻の動向次第で不透明感は強いものの、需給予測などに基づく見通しは、依然高水準も22年に比べて物価上昇圧力の緩和を示唆。
     
  4. コア財価格も供給制約の緩和や中古車価格の下落などから低下基調は持続する見通し。コアサービス価格は、住居費が23年早期に低下基調に転じることが見込まれるものの、パウエルFRB議長が注目する住居費を除いたコアサービス価格は労働需給の逼迫を背景に賃金が高止まりする可能性。
     
  5. 一方、新型コロナ後のインフレに関する最近の研究は、FOMC参加者が予想するインフレ低下を実現するためには、大幅な失業率の上昇を伴う深刻な景気後退は不可避との分析が示されており、足元の堅調な経済状況を維持したまま、インフレが順調に低下する「ノーランディングシナリオ」が実現する可能性は低いだろう。

 
■目次

1.はじめに
2.米消費者物価の動向
  (23年1月の結果)前年同月比で低下基調が持続も、足元で低下スピードは鈍化
  (エネルギー・食料品価格)23年は物価上昇圧力の緩和が見込まれる
  (コア財価格)供給制約の解消から低下基調が持続へ
  (コアサービス価格(住居費))23年早期にピークアウトへ
  (コアサービス価格(除く住居費))労働需給逼迫がインフレの高止まり要因となる可能性
  (インフレ高止まりと景気後退リスク)インフレの速やかな低下に景気後退は不可避の可能性
3.まとめ

経済研究部   主任研究員

窪谷 浩(くぼたに ひろし)

研究領域:経済

研究・専門分野
米国経済

経歴

【職歴】
 1991年 日本生命保険相互会社入社
 1999年 NLI International Inc.(米国)
 2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
 2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
 2014年10月より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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