アクティブ型の国内株式ファンド復権に必要な2つのこと

2023年01月23日

(前山 裕亮) 株式

5――もっと見直されていいのでは

逆に同期間のアクティブ型の米国株式ファンドのパフォーマンスをみても、ファンド数が少ないことについては留意する必要があるかもしれないが、国内株式ファンドと明確な違いがなかった【図表4:赤〇】。これらのことからも、アクティブ型の株式ファンドについてはインデック型と異なり、一概に投資対象全体の投資魅力でだけでファンドの収益力が測れないことが分かる。

なお、この期間に最も高い収益をあげたアクティブ型の米国株式ファンドは「netWin GSテクノロジー株式ファンドBコース(為替ヘッジなし)」であった。2017年から2020年にかけて人気を集めたファンドであり、2022年末でも純資産総額が6,000億円程度ある。テクノロジー系の米国株式であり、いかにも投資意欲がそそられるファンドである。そのようなファンドでも、実はアクティブ型の国内株式ファンドと比べて突出するパフォーマンスではなかったことが分かる。つまり、アクティブ型の国内株式ファンドの中には、このファンドに負けないくらい高いパフォーマンスをあげているものがあったわけである。

このようにアクティブ型の国内株式ファンドの過去のパフォーマンスをみると、国内株式全体の投資魅力は低くても、アクティブ型の国内株式ファンドの可能性を筆者は感じている。勿論、TOPIXを下回るパフォーマンスとなったファンドも多数あり、インデックス型の外国株式ファンドのような手堅さは全くない。つまり、誰にでもお勧めできる金融商品ではないので、あくまでも筆者が感じているのは金融商品としての面白さとか将来の可能性であることは強調しておく。

アクティブ型の国内株式ファンドは同じく面白そうな金融商品であるテーマ型などのアクティブ型の外国株式ファンドのような分かりやすさも派手さもない。それでもアクティブ型の外国株式ファンドを保有している個人投資家などから、もっとアクティブ型の国内株式ファンドは見直されていいのではないだろうか。

6――とにかく攻めの運用を

6――とにかく攻めの運用を

以上のことを踏まえると、アクティブ型の国内株式ファンドが魅力的な金融商品として個人投資家から見直され、これから復権するためには大きく2つのことが必要だと考えている。

まず、1つ目は過去に高いパフォーマンスをあげてきたファンドのように、鋭角的で説得力のある銘柄選択によって高い収益が期待できるようなアクティブ運用を各ファンドで行うことである。そして、理想は実際に高い収益を上げること、もしくは高い収益を上げるファンドが増えることである。実際に高い収益を上げることやそのようなファンドが増えることは困難だが、少なくとも目指した運用を行うこと自体はどのファンドでもできるのではないだろうか。

過去に高い収益をあげたアクティブ型の国内株式ファンドは、投資銘柄をかなり絞っていたものがほとんどで攻めた運用をしていたことがうかがえる。その分、どうしてもファンドの市場との連動性が低くなってしまうが、そもそも個人投資家の中には年金基金などと異なり市場連動性をあまり求めていない人も多い。そのことは市場連動性を意識していない銘柄選択を行っているテーマ型の外国株式ファンドが過去に人気を集めていることからも分かる。極論になるが、絶対収益追求型の商品として販売できるくらい攻めた運用をしている国内株式ファンドでないと、個人投資家は現状の国内株式に対して投資意義を見出せないと思った方が良いだろう。

逆に言ってしまうと、良くも悪くもTOPIXと似たようなパフォーマンスしか上がらないアクティブ運用を行っている国内株式ファンドは、今後も個人投資家に注目してもらえない可能性が高い。あくまでも投信市場でアクティブ型の国内株式ファンドが復権するため戦うべきは、ベンチマークのTOPIXやインデックス型の国内株式ファンドではなく、アクティブ型の外国株式ファンドだと考えている。国内株式ファンドが外国株式ファンドに対抗するには、国内株式全体の投資魅力が低い以上、それを補ってあまりあるほど尖ったアクティブ運用をするしかないのではないだろうか。

7――地道にイメージの改善も

7――地道にイメージの改善も

そして2つ目として、国内株式の投資魅力は低くてもアクティブ型の国内株式ファンドは高い収益が期待できることを個人投資家に上手にアピールしていくことである。これまで高い収益を上げていたファンドが実際にあっても、個人投資家にあまり注目されてこなかった。元々、国内株式全体の印象が悪いこともあり、単に高い収益を上げるだけでは、やはり不十分だと思われる。

その上でアクティブ型の国内株式ファンドの短所である運用キャパシティが問題となる。過去に高パフォーマンスをあげたファンドは、中小型株中心に運用しているものばかりで、運用キャパシティがあまり大きくない。急に大規模な資金流入があると、流動性等の問題で、これまでの運用方針が維持できなくなり、結果的にパフォーマンスも劣化する可能性が高い。そうなると、そのタイミングで買った人だけでなく、これまで保有していた人の期待も裏切ることになる。つまり、アピールの仕方を間違えるとアクティブ型の国内株式ファンドに対する個人投資家のイメージがさらに悪くなり、復権が遠のきかねない。

そのため手間や時間がかかるかもしれないが、アクティブ型の国内株式ファンドの魅力を地道にアピールし、イメージを徐々に改善していくこが求められるだろう。たとえば、一部で行われているファンドマネージャー自らがファンドの魅力や運用状況を語る取組みなども有効な方法だと思われる。このような取組みに限らず、運用会社と販売会社が二人三脚で高パフォーマンスのアクティブ型の国内株式ファンドを大事に育て、定番商品にしていくことが復権の近道だと筆者は考えている。
 
 

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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮(まえやま ゆうすけ)

研究領域:医療・介護・ヘルスケア

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴

【職歴】
2008年 大和総研入社
2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
2022年7月より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会検定会員
 ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

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