ユーロ圏消費者物価(22年12月)-総合指数が大幅低下する一方、コアは加速

2023年01月10日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:総合指数は9%台前半まで減速

1月6日、欧州委員会統計局(Eurostat)は12月のユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数】
前年同月比は9.2%、市場予想1(9.5%)を下回り、前月(10.1%)から減速(図表1)
前月比は▲0.3%、予想(▲0.1%)を下回り、前月(▲0.1%)からマイナス幅が拡大した

【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数2
前年同月比は5.2%、予想(5.1%)を上回り、前月(5.0%)から加速(図表2)
前月比は0.6%、前月(±0.0%)から加速した

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料も除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。

2.結果の詳細:エネルギー主導で総合指数が低下する一方、コア指数は最高値を更新

22年12月のHICP上昇率(前年同月比)は全体で9.2%となり、11月の10.1%から大幅に低下した。一方、「コア部分(=エネルギーと飲食料を除く総合)」は5.2%と11月(5.0%)から加速し、データ公表以来の最も高い伸び率を更新した。

以下、詳細を「コア部分」「エネルギー」「飲食料(アルコール含む)」の3つに分けて見ていく。

まず、コア部分である「エネルギーと飲食料を除く総合」の内訳を見ると、「エネルギーを除く財(飲食料も除く)」が10月6.1%→11月6.1%→12月6.4%、「サービス」(エネルギーを除く)が10月4.3%→11月4.2%→12月4.4%といずれも11月から上昇した(前掲図表2)。前年同月比寄与度では、「財」が1.64%ポイント程度、「サービス」が1.76%ポイント程度だった。

コア以外の部分では「エネルギー」が前年同月比で10月41.5%→11月34.9%→12月25.7%となり、11月に続き大幅に減速、21年10月(23.7%)以来の伸び率まで低下した。前月比でも▲6.5%と11月(▲1.9%)続き2か月連続のマイナスとなり、マイナス幅もかなり拡大した。上流のエネルギー価格高騰の落ち着き(図表3)や、政府の物価高対策が影響していると見られる。後者では、以下で見るように、12月は大国ドイツのインフレ率が大幅に低下しており、天然ガスや地域熱料金の支払軽減措置が影響していると見られる3。エネルギーの前年同月比寄与度は2.77%ポイント程度(11月は3.82%ポイント)まで低下したと見られる(前掲図表1)。
「飲食料(アルコール含む)」は、前年同月比で13.8%(11月13.6%)となり、やや加速傾向にある。飲食料のうち加工食品の伸び率は14.3%(11月13.6%)、未加工食品は12.0%(11月13.8%)となり、未加工食品のピークアウト感が鮮明となる一方、加工食品は加速傾向が続いている(図表4)。飲食料の前年同月比寄与度は3.05%ポイント程度(11月は2.84%ポイント)と見られ、エネルギーの寄与度を上回った。
国別のHICP上昇率では、12月は前年同月比で19か国中1か国が加速したのみで18か国は減速した(図表5)。また、前月比では19か国中6か国がプラスの伸び率だった(図表6)。
 
3 12月は「つなぎ措置」という位置付けで、23年からはガス・地域熱代、電気代に上限が設定される。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2002年 東京工業大学入学(理学部)
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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