持続可能な食料システム-SDGs達成のための必要条件

2023年01月06日

(梅内 俊樹) 年金資産運用

■要旨

人が生きていく上で必要不可欠な食料は、農業、林業、漁業、及び食品産業による生産・加工、流通、消費、廃棄といった一連の食料システムと呼ばれるネットワークを通じて提供されている。しかし、現在の食料システムは、環境に負荷をかけ、様々な危機に対して脆弱で、すべての人々の需要を満たしていないといった課題を抱えている。持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指す2030年までの期間が10年を切る中、持続可能な食料システムの構築は、飢餓の撲滅や食料の安定確保をはじめとする多くのSDGs達成のために必要不可欠な解決策として広く認識されつつある。
 
我が国では持続可能な食料システムの構築に向けて、2021年に「みどりの食料システム戦略」が策定された。策定の背景には、SDGsや環境に対する関心が世界的に高まっており、あらゆる産業においてその対応が求められるようになっていることはもとより、国内の農林水産業の生産者の減少や高齢化が一段と進むことが見込まれるなか、人手不足などによって生産活動に支障が顕在化しつつあることがある。長期にわたる戦略ではあるが、持続性のある産業の育成や地域の雇用・所得の増大、国民の健康的な食生活と地球環境の保全といった効果が得られるような取組やイノベーションの推進が期待される。
 
持続可能な食料システムの構築に向けては、消費者が貢献できることもある。その一つに、食品ロスの削減がある。食品ロス削減はSDGsのターゲットとしても設定されており、食品ロスを含むサプライチェーン全体を通じた食品廃棄物の削減は、廃棄時の運搬・処理に加え、食品の流通・製造時の温室効果ガス排出抑制にも寄与することが期待される。食料の多くを輸入に頼る我が国の食料消費のあり方が、輸出国の環境に影響を及ぼすことや、世界には栄養不足の状態にある人が数多く存在することを踏まえると、食品ロス削減は真剣に取り組むべき課題と言える。世界の食料システムの変革やSDGsの達成をサポートするためにも、消費者一人一人の主体的な取組が求められる。

■目次

1――持続可能な食料システム構築の必要性
2――我が国の「みどりの食料システム戦略」の概要
3――消費者の食品ロス削減

金融研究部   企業年金調査室長 年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

梅内 俊樹(うめうち としき)

研究領域:年金

研究・専門分野
企業年金、年金運用、リスク管理

経歴

【職歴】
 1988年 日本生命保険相互会社入社
 1995年 ニッセイアセットマネジメント(旧ニッセイ投信)出向
 2005年 一橋大学国際企業戦略研究科修了
 2009年 ニッセイ基礎研究所
 2011年 年金総合リサーチセンター 兼務
 2013年7月より現職
 2018年 ジェロントロジー推進室 兼務
 2021年 ESG推進室 兼務

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