英国GDP(2022年7-9月期)-前期比マイナス成長で、消費が低迷

2022年11月14日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:前期比でマイナス成長に

11月11日、英国国家統計局(ONS)はGDPの一次速報値(first quarterly estimate)および月次GDPを公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【2022年7-9月期実質GDP、季節調整値)】
前期比は▲0.2%、予想1(▲0.5%)より上振れたが、前期(0.2%)からマイナス成長に転じた(図表1)
前年同期比は2.4%、予想(2.1%)より上振れたが、前期(4.4%)から減速した

【月次実質GDP(7-9月)】
前月比は7月0.3%、8月▲0.1%、9月▲0.6%となり、9月は予想(▲0.4%)を下回りマイナス幅が大きかった

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想も同様。

2.結果の詳細:特に消費の低迷が目立つ

英国の22年7-9月期の実質成長率は前期比▲0.2%(年率換算▲0.7%)となり、21年1-3月期以来のマイナス成長となった。また、実質GDPの水準はコロナ禍前(19年10-12月)と比べて▲0.4%となり、コロナ禍前水準を回復しない状況でマイナス成長に転じた形となる2。コロナ禍前比の水準をユーロ圏主要国と比べるとスペインより高いが、イタリア、フランス、ドイツより低いという位置にいる(図表2)。
月次GDPでコロナ禍後の動きを追うと(図表3)、22年は6月(▲0.5%)、8月(▲0.1%)、9月(▲0.6%)が前月比マイナスとなり、足もとで経済に下押し圧力が生じていることが分かる3

なお、部門ごとの月次GDPの推移を見ると、生産部門はコロナ禍後の回復は早かったがその後は低下基調にあり、足もと減速感が一段と強まっている。サービス部門は今年に入り概ね横ばいで推移していたが、同じく足もと減速の兆しがある。一方で、建設部門は成長が続いている。
より細かい産業別の動向を確認すると(図表4)、4-6月期はコロナ禍の大きく影響を受けていた業種(住居・飲食、芸術・娯楽業)が高めの伸びを記録したが、7-9月期は総じて低迷した。このほか、4-6月期は電気・ガス、教育などが高めの伸び率となる一方、自家利用、その他サービス、製造業、卸・小売業のマイナス成長が目立つ結果となった。
次に成長率を需要項目別に確認すると、7-9月期は個人消費が前期比▲0.5%(4-6月期0.2%)、政府消費が1.3%(▲1.5%)、投資が2.5%(▲1.4%)、輸出が8.0%(3.6%)、輸入が▲3.2%(▲1.5%)となった。純輸出の前期比寄与度は3.28%ポイント(1.44%ポイント)だった。需要項目で見ると7-9月期は特に消費が冴えない結果だったと言える。

7-9月期の名目GDPは前期比1.0%(4-6月期は1.4%)、前年同期比8.4%(9.8%)、デフレータは前期比1.2%(1.2)、前年同期比5.8%(5.2%)となり、前年同期比で見たデフレータはさらに加速した(図表5)。
 
2 英国の実質GDPは22年4-6月期の伸び率が8月に公表された一次速報値では▲0.2%とマイナスだったが、その後改定され0.2%のプラスに修正された。一方、実質GDPの水準は8月の一次速報値時点では22年4-6月期にコロナ禍前比+0.6%とコロナ禍前を上回っていたが、改定後にはコロナ禍前を下回る水準に修正された。
3 ただし、プラチナ・ジュビリー(エリザベス女王の在位70周年)の記念式典と銀行休日の変更で5月の営業日が1日多く、6月の営業日が2日短い。また、9月はエリザベス女王の国葬で銀行休日が設定された。ONSは9月の落ち込みの約半分が国葬に伴う銀行休日の影響であると指摘している。このほか、9月はストライキによる企業活動への影響にも言及している。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2002年 東京工業大学入学(理学部)
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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