これらの事案では2つの行為が問題とされた。エンドユーザーがGKのCPS経由で音楽やゲームのアプリを取得した場合に、それらアプリのための楽曲やゲームのアイテムを購入するには、アプリ内課金システム(In-App Payment System)の利用が強制されていた。具体的には1)アプリストア内でアイテムが購入された場合にはアプリ内課金システムの利用が強制され、その価格の30%をAppleに支払う、2)アプリストア外でアイテムが購入できることを告知し、または誘導することを禁止していた。
米国のエピックゲームズ社の訴訟については、カリフォルニア州連邦地裁がAppleによるアプリ外への誘導禁止条項(anti-steering条項、上記2))が州の定める競争法違反として認定された。
またEUでは、2021年4月30日、欧州委員会はAppleが、App Store経由での音楽ストリーミングサービスについて、音楽配信の独占的な地位を乱用して上記①および②を行うことで競争をゆがめたとの暫定的な見解を示した。
これらの判断の影響は日本にもあり、日本公取委がAppleを審査していたところ(Apple被疑事件)上記2)についてアプリ外誘導禁止を取りやめるとの自主的な申し出があり、審査を終了した(2021年9月2日)。
このように日米欧で問題となった類型であり、規制の対象となったのは不自然ではない。
(2)CPS外で取得したコンテンツ利用(5条5項)
(条文の概要GKは、エンドユーザーが自社のCPS外でビジネスユーザーから取得したサービス、コンテンツ、定期購読(subscription)、購読物(features)その他のアイテムについて、自社のCPSで取得したアプリ経由での利用を認めなければならない(5条5項)。
(解説)本項は上記5条4項の規定に従って楽曲やアイテムなどを、GKのCPS上で作動するアプリで聴いたり、利用したりすることに制限を加えてはならないとするものである(前文41)。5条4項を補完する規定と考えられる。
(3)広告主への手数料等開示(5条9項)
(条文の概要) GKはオンライン広告掲出サービスを提供している広告主(advertisers)に対して、広告主(広告主によって権限を与えられた第三者を含む、以下同じ)の要請によって、無償で一日ごとの情報を提供しなければならない。この情報には(a)広告主により支払われる個別の広告に係る価格と手数料、(b)媒体社により受領される報酬(媒体社による同意がある場合に限る)、(c)価格、手数料および報酬が計算されるマトリックスが含まれる(5条9項)。
(解説)本項と下記(4)は広告にかかわるものである。まず本規則の理解として、しばしばオンライン広告は複雑であり、価格等についても不透明さがある。さらに個人情報保護の観点から昨今はさらに不透明さが増した。このように広告が不透明であることは広告効果に対して適正なコストが支払われているかどうかが不明ということであり、過剰に支払いを行っている懸念がある。多くの広告コストは物やサービスの価格の上昇につながり、エンドユーザーの不利益につながるとする(前文45)。
(4)媒体社への報酬等開示
(条文の概要)GKはオンライン広告サービスを行っている媒体社(publishers)に対して、媒体社(媒体社によって権限を与えられた第三者を含む、以下同じ)の要請によって、無償で一日ごとの媒体社の在庫(inventory)についての情報を提供しなければならない。この情報には、(a)媒体社が個別の広告掲載によって受け取る報酬と媒体社が支払う手数料、(b)広告主によって支払われる価格(広告主の同意がある場合に限る)、(c)価格と報酬が計算される方法が含まれる(5条10項)。
(解説)媒体社とは自社が保有・運営するブログサイトやニュースサイトなどにおいて、広告を掲載して広告報酬を得る事業者のことをいう。条文の解説については上記(3)参照。
5――6条・7条関係