(2)運行管理
道路運送法に基づき、タクシー会社の運行管理者は毎日、ドライバーの乗務前に点呼を行い、健康状態などを確認している。上述のように、ドライバーが疾病や疲労、睡眠不足等によって、安全運転ができない恐れがある場合は、乗務させてはならない。ドライバーもまた、疾病や疲労、睡眠不足等によって、安全運転ができない恐れがあるときは、申し出なければならない。
その他、運行中にも、運行管理者等が運行状況を把握し、管理をしやすいように、各車両の運行速度や運行距離、運行時間などを記録し、営業所でも共有できる「デジタルタコグラフ」を導入するタクシー会社が増えている。国交省が補助金を交付しており、全タク連によると、2021年3月時点で約7万5,000台の車両に導入されているという。
(3)多様な働き方
高齢ドライバーの増加により、近年、注目されているのが多様な働き方である。タクシードライバーは、一般的には、早朝から始業して深夜に終わる出番と、休みとを繰り返すローテーションが多いが、高齢ドライバーなど健康管理に注意が必要な労働者を対象に、日勤だけでも認めるというようなものである。ただし、タクシー会社が日勤のシフトを組むためには、通常通りに勤務できる高齢以外のドライバーの確保が必要となるため、人手不足解消と一体的に取り組む必要がある。
(4)安全教育
各タクシー会社は、65歳以上のドライバー等に対し、定期的に指導監督(安全教育)をすることが義務付けられている。安全運転に対する注意喚起などである。ただし、全タク連が作成した「ハイヤー・タクシー業 高齢者の活躍に向けたガイドライン」では、現場では高齢ドライバーによる軽微な事故が増えていることから、より頻繁に安全教育を行って、繰り返し注意喚起することを呼びかけている。ドライブレコーダーの映像を用いた指導をしたり、ヒヤリハット事例を報告させたりして、意識を高めている事例もあるという。
(5)技術の活用
高齢ドライバーの健康管理と安全運行に取り組んだ上で、万が一の場合に備えて、車両の衝突防止や被害軽減に役立つと考えられるのが、先進安全技術の活用である。その代表的な対策は、衝突被害軽減ブレーキ等を搭載したサポカーの導入である。
全タク連常務理事の松谷輝也氏によると、2017年に標準安全システムを装備したタクシー専用車両がトヨタ自動車から発売され、2022年5月時点で、全国で2万9,000台導入された(うち東京が1万6,000台)
11。ただし、タクシー車両は全国で約22万台あり(福祉輸送限定を含む)、導入済は約1割に過ぎない。特に、地方では導入が遅れている。サポカー以外にも、過労運転防止機器や(2)で述べたデジタルタコグラフ、自動日報装置等も、安全運転、事故防止に資すると期待できる。
11 松谷輝矢「タクシー業界の現状と課題等」『月刊交通』東京法令出版、2022年7月号