■要旨
市場プレーヤーである生命保険会社とイスラム生命保険会社、生命保険会社の破綻の側面から、インドネシアの生命保険市場の状況を見る。
2020年末現在のインドネシアにおける登録生命保険会社数は59社である。内訳は、内国会社36社、外資合弁会社23社である。
収入保険料シェアを見ると、内国生保会社が40.9%、外資合弁会社が59.1%。収入保険料上位に外資合弁会社が数多くランクインしている。
外資合弁会社の外資出資比率の上限は80%。ただし過去の経緯により外資が既に80%以上の株式を保有している場合、外資はその比率を維持することが認められる。
インドネシアにおけるイスラム生命保険事業の将来性は明るいと考えられている。2020年末現在、イスラム生命保険専業会社が7社、イスラム生命保険を提供する部門を持つ生保会社が23社存在する。
ただし、2014年保険法が、2024年までに、一般の生命保険会社の内部部門であるイスラム生命保険部門をスピンオフして、独立したイスラム生命保険会社としなければならないとしていることについて、各社が対応できるのか懸念されている。
近年、インドネシアで生保会社のいくつかが経営破綻し、市場に混乱をもたらした。
2016年にOJKはブミプトラ1912に法定管理人を任命し、同社の再建を委ねたが、経営状況は改善しなかった。法定管理人の資質も大きいが、ブミプトラ1912がインドネシア唯一の相互会社であるため監督の空白が生まれたことも大きな要因と見られている。
2018年に表面化した国有生保会社ジワスラヤの経営破綻は、汚職も絡んで大きな社会問題となった。株主である政府は公的資金を注ぎ込んで受け皿生保会社を設立し、給付のカットを受け入れたジワスラヤ契約者の契約を移管することにより事態の収拾を図った。
この他、ワナアルタ生命、クレスナ生命も経営危機状態にある。
コロナ・パンデミック初期に始まったユニット・リンク保険の苦情問題も含め、インドネシア生保業界の今日の状況は、かつての日本の生保業界が半世紀以上をかけて経験してきたさまざまな問題が一気に吹き出したかのような、混沌とした状況にあるように思われる。
それでもインドネシア生保市場の発展軌跡は崩れないと思われる。
■目次
はじめに
1――生命保険会社
1|生命保険会社数の推移と内訳
2|外資の出資上限
2――イスラム生命保険(シャリア生命保険またはタカフル生命保険)会社の状況
3――経営破綻の発生
1|ブミプトラ1912
2|ジワスラヤ
3|ワナアルタ生命
4|クレスナ生命
おわりに