2|海外ではアクチュアリーが気候指数を開発しているケースもある
一般に、気候という言葉は、長期に渡る気象の状態を指すものとされる
1。近年発生している気温上昇や降水量の増大などを、短期間の変動ではなく、長期的な変化という視点でとらえる必要がある。
そこで、気候変動の状況を映す指標があると有用である。この指標は、気候変動を全体的に示す客観的な尺度であることが求められる。
特に、保険会社では、自然災害による損害を補償する損保、気候変動から生じる生命や健康のリスクを保障する生保など、さまざまな形で、気候変動リスクを引き受けている。こうした保険引受リスクの管理にあたり、気候指数の開発・活用が役に立つものとみられる。
先行事例として、北米(アメリカ、カナダ)では、2016年に「アクチュアリー気候指数」(Actuaries Climate Index, ACI)が開発され、定期的に指数値の公表が行われている
2。また、オーストラリアでは、2018年に「オーストラリアアクチュアリー気候指数」(Australian Actuaries Climate Index, AACI)が開発され、定期的な指数値の公表が行われている
3,4。
本稿では、それらの内容を踏まえつつ、同様の指数の日本での試作に取り組むこととしたい。
1 辞書では、気候とは、「各地における長期にわたる気象(気温・降雨など)の平均状態。ふつう30年間の平均値を気候値とする。」 気象とは、「③〔気〕(weather)大気の状態および雨・風・雷など、大気中の諸現象。」(①と②は省略) (「広辞苑第七版」(岩波書店))とされている。
2 ACIについては、"Actuaries Climate Index - Development and Design"(The American Academy of Actuaries (AAA), The Canadian Institute of Actuaries (CIA), The Casualty Actuarial Society (CAS), Society of Actuaries (SOA), 2016)が参考になる。
3 AACIについては、"Australian Actuaries Climate Index - Design Documentation"(Actuaries Institute, 2018)が参考になる。
4 ヨーロッパのアクチュアリーの間でも、気候指数の検討が進められている。具体的には、"Extension of the Actuaries Climate Index to the UK and Europe-A Feasibility Study" Charles L. Curry (Institute and Faculty of Actuaries, Dec 2015)といったペーパーが公表されている。しかし、まだ指数の開発、公表には至っていない模様。
2――北米の気候指数