コラム

海外投資家が大幅に売り越し~2022年6月投資部門別売買動向~

2022年07月13日

(森下 千鶴) 株式

2022年6月は上旬こそ日経平均株価が2万8,000円を超えるまで上昇したが、その後は一時2万6,000円割れするなど急落した。下旬は2万7,000円台まで回復した局面もあったが、月末は再び下落し、2万6,393円で終えた。主な投資部門別で見ると、海外投資家が大幅に売り越す一方で、個人と事業法人が買っていた。
2022年6月(5月30日~7月1日)の主な投資部門別売買動向(現物と先物の合計)は、海外投資家が1兆407億円の売り越しと、最大の売り越し部門であった。特に6月第3週(13~17日)に現物と先物合わせて1兆7,181億円を売り越した。その背景としては、6月10日夜に発表された米消費者物価指数(CPI)が前年同月比8.6%(予想8.3%)、前月比1.0%(予想0.7%)と市場予想を上回る上昇率だったことから、早期インフレ収束期待が後退し、FRBのタカ派姿勢が強まり、金利が上昇するとの警戒感が高まったことがある。実際、14日、15日のFOMCで0.75%の利上げが行われ、金融引き締めが景気を冷やすとの懸念も加わり、米国株は大幅に下落した。それに伴って日本株式も売却する海外投資家が多かった様子である。
その一方で個人は6月に6,690億円の買い越し、日経平均株価の下落幅が2,000円に迫った6月第3週には1兆284億円も買い越していた。個人は従来と同様、株価が大きく下落しているときに買いを入れる「逆張り」をしていたことが確認できる。
 
また、事業法人は6月に6,371億円の買い越しであった。2021年6月から13カ月連続で買い越しており、上場企業が自社株買いを積極的に行っていることがうかがえる。2022年4~6月も約4.3兆円(TOPIX構成銘柄)の自社株買いが設定されており、コロナ禍前の2019年度を超える金額が設定されている。背景には、株主還元強化と自社の株価が割安という判断があると考えられ、事業法人の買いは今後もしばらくは継続すると予想される。
 
 

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金融研究部   研究員

森下 千鶴(もりした ちづる)

研究領域:医療・介護・ヘルスケア

研究・専門分野
株式市場・資産運用

経歴

【職歴】
 2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
 2015年 ニッセイ基礎研究所入社
 2020年4月より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会検定会員
 ・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)

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