ロシアGDP(2022年1-3月期)-減速したものの、プラス成長は維持

2022年06月20日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:前年同期比3.5%とやや減速

6月17日、ロシア連邦統計局は国内総生産(GDP)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【実質GDP成長率(未季節調整系列)】
2022年1-3月期の前年同期比伸び率は3.5%、予想1(同3.5%)を上回り、前期(同5.0%)から減速した(図表1・2)

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:西側諸国から経済・金融政策を課されたものの、1-3月期はプラス成長を維持

ロシアの22年1-3月期の実質GDP伸び率は3.5%で、5月18日に公表されていた予備推計値(3.5%)と変わらなかった。また、季節調整系列の前期比は0.5%となり、こちらも21年10-12月期(1.4%)から減速したもののプラス成長は維持している。

ロシアは2月下旬にウクライナに侵攻し、西側諸国から経済・金融制裁を課されている。特に3月以降は政策による経済への影響も大きくなったものと見られるが、成長率は若干の減速に留まり、前年同期比でも前期比でもプラスが維持された。執筆時点では需要別のデータはロシア連邦統計局のウェブサイト上で未公表であるため、公表された産業別データなどを確認したい。

産業別の前年同期比は、ほとんどの業種でプラス成長となっている(図表3)1-3月期は特に、第二次産業の「鉱業」第三次産業の「芸術・娯楽」やの伸び率が高かった。一方、「電気・ガス」「教育」「医療」「自家利用2」はマイナス成長となったが、マイナス幅は小幅だった。
産業別の前期比は、第一次産業が▲3.6%、第二次産業が0.7%、第三次産業(金融・不動産)が▲1.0%、第三次産業(その他)が0.2%となった。第一次産業や第三次産業(金融・不動産)はマイナス成長だが、急落というほどの落ち込みではない(図表4)。より細かい産業分類で見ると、プラス幅大きかった産業は「運搬」、マイナス幅が大きかった産業は「不動産」だった。

1-3月期の名目成長率は前年同期比27.8%(21年10-12月期は24.8%)、GDPデフレータ伸び率は前年同期比23.4%(同18.8%)だった(図表5)。国内の消費者物価は制裁の影響を受けて3月から急上昇しており(2月9.15%→3月16.69%)3、デフレータも1-3月期には加速した。
なお、西側諸国からの制裁による影響は、生産や消費(小売売上高)を中心に4月の悪化が目立つことから(図表6)、4-6月期以降のGDP統計では、その影響がより生じてくるものと見られる。ただし、現時点で公表されている最新時点(4月)の生産や消費の落ち込み幅は、コロナ禍直後の落ち込み幅よりは限定的なものにとどまっている。

今後、5月以降の状況がどうなっているのか、その状況・データが引き続き注目される。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2002年 東京工業大学入学(理学部)
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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