グーグルショッピングEU競争法違反事件判決-欧州一般裁判所判決

2021年12月22日

(松澤 登) 保険会社経営

■要旨

2017年、欧州委員会はGoogleが自社サービスであるGoogle Shoppingについて、Google検索結果において優遇していることが、競合する比較ショッピングサイトへの差別的取扱に該当するとの認定をした。そして、このような行為はEU競争法(EU機能条約)違反であるとして課徴金納付命令をだした。
 
Googleは、この命令の取り消しを主張してEU一般裁判所に提訴をし、その判決が2021年11月10日付で下された。事実関係は以下のようなものである。
 
判決文の認定事実によると、Googleはその検索結果ページにおいて、上部に掲示されるShopping Unitsという部分にGoogle Shoppingの商品を掲載していた。他方、Google Shoppingと競合する比較ショッピングサイトの商品は、一般検索結果の中に掲載されていた。さらに商品検索機能として調整アルゴリズムを用い、競合する比較ショッピングサイトの検索結果はより下部に掲載される傾向にあった。この結果、競合する比較ショッピングサイトへのGoogleからのトラフィック(流入量)が減少した一方で、Google Shoppingへのトラフィックは増加した。
 
裁判所はこのような慣行を差別的な取扱として、一般検索サービス市場における支配的な事業者であるGoogleが隣接する比較ショッピングサイト市場の競争を阻害する濫用行為を行ったとして、EU競争法違反であると判断し、欧州委員会の命令をほぼそのまま認めた。
 
本件は、差別的取扱に基づく排除型の私的独占ケースとして、オンライン検索サービスが問題となった事例として先例的な価値を有するものと思われる。

■目次

1――はじめに
2――前提事実と適用法令
  1|Google検索を取り巻く事実関係
  2|適用法令
3――日本における排他的私的独占に係る指針
4――Googleの主張と裁判所の判断
  1|総論
  2|五つの主張それぞれに対する判断
5――おわりにかえて

保険研究部   専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登(まつざわ のぼる)

研究領域:保険

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

経歴

【職歴】
 1985年 日本生命保険相互会社入社
 2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
 2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
 2018年4月 取締役保険研究部研究理事
 2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
 2024年4月より現職

【加入団体等】
 東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
 東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
 大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
 金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
 日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等

【著書】
 『はじめて学ぶ少額短期保険』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2024年02月

 『Q&Aで読み解く保険業法』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2022年07月

 『はじめて学ぶ生命保険』
  出版社:保険毎日新聞社
  発行年月:2021年05月

レポートについてお問い合わせ
(取材・講演依頼)