地域別(2021年9月13日~31日時点の緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発出の有無別
3)に見ると、不安層の割合は、いずれの地域でも「式典や行事の縮小・中止による経験不足」や「遊び場不足によるストレス」が半数を超えて上位にあがるほか、まん延防止等重点措置の発出地域では「家で過ごす機会が増えネット使用時間が長くなる」(67.5%)も上位にあがる。
各地域の比較については、それぞれの調査対象数が大きく異なるため
4厳密な分析は難しいが、比較的調査対象数の多い緊急事態宣言発出地域と発出無しの地域に注目すると、「急な休校や休園等による仕事への支障」を除けば、緊急事態宣言発出地域の不安層の割合は発出無しの地域をおおむね上回る。
特に「登校機会減少による生活リズムの乱れ」(+10.1%pt)では約1割上回るほか、「オンライン教育による教育格差」(+4.8%pt)や「家で過ごす機会が増えゲーム時間が長くなる」(+4.2%pt)、「子どもからの家庭内感染」(+3.7%pt)、「遊び場不足によるストレス」(+3.3%pt)でもやや上回る。
なお、文部科学省が幼稚園から高等学校までの公立学校に対して9月からの新学期における学校の対応を調査した結果
5によると、緊急事態宣言発出地域では、他の地域と比べて全ての学校種別において「夏季休業の延長又は臨時休業を実施している」や「短縮授業又は分散登校を実施している」の割合が高い。この2つのいずれかの対応をしている割合は緊急事態宣言発出地域では約4分の1、まん延防止等重点措置の発出地域では約1割、発出無しの地域では約3%である
6。
よって、文部科学省の調査では調査対象が限定されるものの、緊急事態宣言発出地域では、休校や短縮授業等の対応を取ることで対面授業の機会が減った学校が比較的多くなり、親は子どもの生活リズムの乱れやオンライン教育による悪影響、ゲーム時間の延長といった対面授業が減ることで派生する不安を比較的強く感じている可能性がある。
ところで、「急な休校や休園等による仕事への支障」については、発出無しの地域の不安層が他の地域を上回る(緊急事態宣言発出地域より+7.9%pt、まん延防止等重点措置より+3.9%pt)。感染が比較的拡大していない地域で休校関連の不安が強いという、逆にも見える状況の要因の1つには親の働き方の違いの影響があげられる。
地域別に親の職業を見ると(図表略)、発出無しの地域の親では自営業・自由業従事者の割合が高い
7とともに、就業者のうち在宅勤務を利用していない割合が高い
8傾向がある。本稿では、調査対象数の制限から、地域別の分析をさらに深化させることは難しいが、コロナ禍において親が感じる子ども関連の不安には親の働き方による違いが影響することが予想されるため、次稿で分析する予定だ。
3 参考:内閣官房「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言の実施状況に関する報告」(令和3年10月)等
4 調査対象は「国勢調査」の性年代別人口を基に割付けている。調査期間では緊急事態宣言発出地域に東京をはじめとした大都市が多く含まれていたため、緊急事態発出地域の調査対象数が自ずと多くなる。
5 「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた新学期への対応等に関する状況調査(第2回)の結果について(令和3年9月17日)」、調査対象は公立の幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校および特別支援学校を所管する教育委員会。
6 都道府県別・学校種類別の公表値から、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発出の有無別に手元で再集計した値。
7 本稿における調査対象について、地域別に親の職業を見たところ、正規雇用者は緊急事態宣言発出地域49.6%・まん延防止等重点措置発出地域45.0%・発出無しの地域50.0%、同様に非正規雇用者は19.8%・20.0%・23.8%、自営業・自由業は4.6%・0.0%・11.3%、専業主婦・主夫は24.8%・30.0%・15.0%、無職・その他は1.2%・5.0%・0.0%。
8 就業者の在宅勤務利用率は、緊急事態宣言発出地域44.0%、まん延防止等重点措置発出地域42.3%、発出無しの地域36.8%。