ふるさと納税はなぜ3割か?-課税状況データを基に最適な返礼品の割合を考える

2021年09月07日

(高岡 和佳子) リスク管理

■要旨

「ふるさと納税の返礼品が一種の還付となっており、所得が多いほど受けるメリットが大きい」という指摘がある。事実、高額納税者ほど、ふるさと納税利用率は高い。

2019年6月から新制度が始まり、返礼品の割合を3割以下に抑えることが厳格化された。返礼品の割合低下により、ふるさと納税によるメリットが低下したが、ほとんどの全ての所得階級において、ふるさと納税利用率は低下しなかった。

「本来返礼品は必要ない」という意見もあるが、「返礼品による制度の定着や地方の特産品のPR効果」もあり、過度な返礼品競争は困るが、返礼品を一律廃止し制度がほとんど利用されないのも困るという現状を踏まえて返礼品の割合(上限)は3割と決定された。

しかし、返礼品の割合の決定において、納税者がふるさと納税をするかしないかは十分考慮されていない可能性が有る。当レポートでは、納税者の意思決定プロセスに着目し、最適な返礼品の割合を導出し、返礼品の割合の引き下げが検討に値することを示す。

■目次

1――高額納税者ほどふるさと納税の利用率が高い
2――ほとんどの所得階級においてふるさと納税利用率は増加している
3――返礼品の割合はなぜ3割か?
4――課税状況データを基に最適な返礼品の割合を考える
  1|自治体に残る金額を基準に最適と判断する
  2|経済合理的な納税者を前提に、返礼品の割合とパイの大きさの関係を考える
  3|納税者による閾値の相違を考慮する場合
  4|寄付者の閾値は低く、閾値は変わらないと考える場合
5――返礼品の割合引き下げると不平等も解消
6――まとめ
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