DB導入企業の積立状況-退職給付信託が積立比率の改善に寄与。しかし課題も。

2021年08月31日

(梅内 俊樹) 年金資産運用

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■要旨

日銀によって国内金利がゼロ近傍でコントロールされる状況が続き、分析対象企業の割引率の平均が0.6%弱の水準で安定するなか、退職給付債務はほぼ横ばいで推移する一方で、内外の株価上昇率が40~60%になるなど、2020年度は極めて良好な運用環境に恵まれて、年金資産が大幅に増加したことを受け、DB導入企業の積立比率(対象企業の年金資産合計/対象企業の退職給付債務合計)は2020年度に大幅に改善した。

なかでも、「退職給付信託を設定している企業」の積立比率の改善が顕著となった。持ち合い株式の受け皿として広がり、株式割合が高いと推測される「株式拠出型」の退職給付信託が、株高を背景にその時価残高を大きく伸ばしたことが、「退職給付信託を設定する企業」の積立比率を大きく押し上げたものと推測される。

しかし、株式割合が高い退職給付信託は、母体企業の財務の安定性という点ではメリットよりもデメリットの方が多い。コーポレートガバナンス・コードを受け、持ち合い株式の解消が求められていることも踏まえると、政策保有株式として認識される「株式拠出型」の退職給付信託については、中長期的な方向性として「運用型」に切り替えていくことが求められていると言える。

■目次

1――DB導入企業の積立比率
2――退職給付信託と積立比率
  1|退職給付信託を設定有無と積立比率
  2|退職給付信託の見直しの必要性

金融研究部   企業年金調査室長 年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

梅内 俊樹(うめうち としき)

研究領域:年金

研究・専門分野
企業年金、年金運用、リスク管理

経歴

【職歴】
 1988年 日本生命保険相互会社入社
 1995年 ニッセイアセットマネジメント(旧ニッセイ投信)出向
 2005年 一橋大学国際企業戦略研究科修了
 2009年 ニッセイ基礎研究所
 2011年 年金総合リサーチセンター 兼務
 2013年7月より現職
 2018年 ジェロントロジー推進室 兼務
 2021年 ESG推進室 兼務

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