つみたてNISA口座からの買付金額が急増
2018年1月から始まった「つみたてNISA(少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度)」、3年目となった2020年は制度の活用がますます進んだ様子である。
2020年末の口座数は302万口座と2019年末の189万口座から1.6倍に、買付金額の増加は口座数増加より顕著で2020年1年間で4,639億円と2019年の2,044億円から2.3倍になった。四半期ごとにみると、特に2020年10月-12月に買付金額が2,002億円と前の四半期の7月-9月の1,035億円から倍増したことが分かる[図表1]。
口座開設後に実際に買付を行う投資家が増えた
つみたてNISAに関する詳細データが開示されるのが年1回、12月末のみである。そのため、なぜ2020年10月-12月に買付金額が急増したのか分かりかねる部分もあるが、それまで口座開設したものの買付を行っていなかった投資家が10月-12月に買付を開始することが多かったのかもしれない。
実際に2020年は買付が行われた口座数が全体の口座数以上に増加し、口座の利用状況も改善している[図表2:左]。2018年、2019年は開設されている口座の6割弱からしか買付が行われていなかったが、2020年は7割弱と1割ほど増加した。
さらに、2020年に買付を増やす投資家も多かった様子である。1口座あたりの平均買付金額(買付なし口座を除外)が2020年は23万円と2019年の19万円から増加している。
ここで年代別で買付が行われた口座数をみると、2020年も現役世代である20歳代から50歳代で活用がさらに進んだことが分かる[図表2:右]。特に、30歳代の増加が顕著であった
2020年は2019年の「年金2,000万円不足」問題のような、つみたてNISAの活用が進むような明確なきっかけはなかったはずである。ただ、「年金2,000万円不足」問題は意外と2020年に入っても意識されており、コロナ禍で在宅時間が増える中、資産形成について真剣に考え、調べ、実行に移す時間的余裕がある方も多かったと思われる。そしてなにより、2020年4月以降の良好な株式市場環境も追い風になったはずである。そのようなことが投資家の背中を押し、つみたてNISAの活用がより進んだのかもしれない。
コロナ・ショックでも売却する投資家は少なく
なお、2020年は2、3月に金融市場が混乱、いわゆるコロナ・ショックがあった。つみたてNISA対象投信でも基準価額が大きく下落するものも多かったが、嫌気して売却してしまった投資家は少なかったようである。
2020年のつみたてNISAからの売却額は519億円であった。年初残高3,069億円の17%ほど売却が出たことになるが、2019年も18%( = 売却額158億円/年初残高884億円)ほど売却されている。2020年に売却が膨らんだ様子はなかったといえよう。
ただ、つみたてNISAから2年連続で2割弱の売却があり、2020年もそれなりに売却が出たともいえる。制度趣旨を踏まえると、1-2年程度の短期で売却してしまうのはもったいないと筆者は感じている。
つみたてNISAの活用が今後どのくらい進むのかと合わせて、投資家がどのように活用していくのか、長期投資が根付いていくのかについても、引き続き注目してみていきたい。
2021年は買付金額が1兆円超えか
2021年に入ってから、外国株式のインデックス投信などつみたてNISA対象投信への資金流入が一段と増加している。そのため、つみたてNISAからの買付金額が2021年は8,000億円(2020年10月-12月の約4倍)を軽く超え、1兆2,000億円から1兆5,000億円になる可能性が高そうである。
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