(日銀)資金繰り支援策の延長、気候変動対応の新資金供給策導入を決定
日銀は6月17日~18日に開催した金融政策決定会合において、CP・社債等の買入れと金融機関向けのコロナ対応資金供給から成る「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム」(以下、特別プログラム)の期限を半年間延長(今年9月末→来年3月末)することを決定した。
さらに、気候変動関連分野での民間金融機関の多様な取り組みを支援するため、「金融機関が自らの判断に基づき取り組む気候変動対応投融資をバックファイナンスする新たな資金供給の仕組み」を導入することも決定した。この新たな資金供給制度は、従来の成長基盤強化支援資金供給の後継と位置付けられ、年内を目途に開始するとのこと。そして、その骨子素案を次回7月の決定会合で公表する予定とした。
なお、同月で退任予定の政井審議委員は採決を棄権した。決定会合で委員が採決を棄権するのは2004年以来のことで極めて異例なことだ。
ちなみに、声明文における景気の総括判断は「(内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、)基調としては持ち直している」に維持された。個別項目では、輸出や生産、住宅投資の判断が上方修正されている。
会合後の総裁会見では、政井審員の採決棄権理由について、黒田総裁から「政井委員自身は民間企業の取締役候補者であることが明らかになっているので、金融政策に関する意思決定の中立性・公正性を明確にするために、自らのご意思として、議決権を行使しないことにされた」との説明があった。
黒田総裁は、特別プログラムの延長の理由については、「特に対面型サービスでは下押し圧力の強い状況が続いている」、「感染症の影響の収束には暫く時間がかかると予想されるので、そうしたもとで、企業等の資金繰りにはストレスのかかる状態が続くのではないかとみている」、「引き続き、企業等の資金繰りを支援していくことが、わが国経済を支えるうえで重要と判断した」と説明した。
一方、気候変動対応の新資金供給策の導入理由については、「気候変動およびそれへの対応は、中長期的に、経済・物価・金融情勢にきわめて大きな影響を及ぼし得る」ため、「中央銀行の立場から、民間金融機関による気候変動への対応を支援し、長い目でみたマクロ経済の安定に貢献することは、「物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資する」ものであると考えている」と説明。新資金供給策は「ミクロの資源配分への具体的な関与をできるだけ避けながら、金融政策面で気候変動への対応を支援する新たなアプローチ」で、「情勢変化に柔軟に対応することもできる」とその利点を強調する一方、具体的な内容については「今後、検討していく予定」と言及を避けた。
このタイミングで導入を打ち出した理由については、G7の議論や政府の対応はあまり関係なく、「これまでBISその他を通じて、先進国の中央銀行と意見交換や情報交換をしていて、それぞれ様々な制約条件はあるものの、やはり中央銀行として何らかの対応をすべきではないかとの考えが拡がっている」、「日本銀行として(中略)かなり長く議論してきて、その結果、このタイミングになった」、「(タクソノミーなどが)全て整うまで何もしないで待っているのはいかがか(と考えた)」との説明があった。
なお、直近の経済動向については、総裁個人の感想としたうえで、「前よりも非常に展望が明るくなったとはまだ言えない」と評価。一方でワクチン接種の早いペースでの進行を挙げ、「全体として前よりも明るい見通しに向かっているのではないか」と期待を口にした。
金融政策以外のオペレーション面では、6月29日公表の長期国債買入れ方針(オペ紙)において、従来1カ月間の方針を前月末に公表していた方式を四半期分(今回は7~9月)をまとめて公表する方針に変更した。3月に決定した変動幅の実質的な拡大後も金利の動きが膠着し、国債の流動性が改善していないことを受けた是正措置とみられる。買入れ金額は前月から幅広い年限分について減額された。