ユーロ圏失業率(2021年4月)-失業率は8.0%まで低下

2021年06月02日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:失業率は8.0%に低下

6月1日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏の失業率を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏19か国失業率(2021年4月、季節調整値)】
失業率は8.0%、市場予想1(8.1%)より低く、前月(8.1%)からも低下(図表1)
失業者は1303.0万人となり、前月(1316.4万人)から13.4万人減少した

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:雇用環境は安定

ユーロ圏の4月の失業率は8.0%と前月からやや低下した。3月までの改定値は、失業率の数値は変更されなかった。失業者数は13.4万人減となり、3月(20.7万人減)ほどではないが、減少数が続いた(図表3)。

若年失業率は4月で17.2%と3月(17.2%)から横ばいだった(図表2)。3月までの若年失業率の前月からの改定幅も小幅だった。

コロナ禍における景気後退の雇用状況を世界金融危機時と比較すると、今回のコロナ禍における失業者数・失業率の悪化が短期間で止まっている点が特徴と言える(図表3・4)。昨年11月頃から感染拡大と行動制限の強化が見られたが、大きく悪化することはなく、この期間の改善はやや鈍化したものの、失業者数で見れば昨年9月から8か月連続での減少が続いている。
 
国別の4月のデータを見ると、18か国中7か国が悪化、5か国が改善、6か国が横ばいとなっており、やや悪化している国の方が多い。国ごとのバラツキはあるが、4月はフランスの改善が大きかったため、ユーロ圏全体の失業率低下に大きく寄与したと見られる(図表5)。若年失業率も国によって改善と悪化でバラツキがみられる(図表6)。
詳細な月次データを公表しているイタリアとポルトガルについて確認すると、4月はいずれの国でも就業者数が増加、非労働力人口が減少、失業者数が増加となっている(図表7・8)。いずれの国も失業率が悪化しているが、就業者数自体が増加しているため雇用環境は安定していると見られる。非労働力人口減少と失業者数増加は、景況感の回復などを受けて職探しを諦めた人の求職活動が活性化したことを反映している可能性もある。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2002年 東京工業大学入学(理学部)
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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