2|
性・年齢別での効果
次に、全国と同様の方法で、性・年齢別でのマイナポイントの効果を推計した(図表3)。
この結果から、どの属性においてもマイナポイントによりマイナンバーカードの取得が進んだことがわかるが、特徴的な3つの点について述べたい。
一つ目は、15歳以下ならびに、子育て世代でマイナポイントの効果が大きかったことである。マイナンバーカードは、主に内蔵されている電子証明書や、マイナンバー確認のために使用されることが多い。しかし、15歳以下では、行政手続きやマイナンバーを提出する機会は限られるため、マイナポイントが始まる前まではカード保有のメリットが薄く、交付率は他の世代よりも低かった。
マイナポイントは、一人当たり最大で5,000円分のポイントを受け取ることができる。マイナンバーカード取得のための申請手続きは面倒であるが、子供の分も合わせて手続きすればその分ポイントを多くもらうことができるため、カード取得のメリットは相対的に大きくなる。15歳未満の場合、カードの申請は、保護者が代理で行う。子供にとってカード自体は必要でなくとも、ポイント獲得のために、親が子供の分も一緒に申し込み手続きをした可能性が高い。
また、コロナによる手続きの緩和措置もカード取得を押し上げた可能性がある。マイナンバーカードの交付は、未就学児等で本人の同行が困難である場合を除き、通常、保護者と子供が一緒に受け取りを行う必要がある。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえて、当面の緊急措置として、外出自粛を行っている申請者については、代理人による受け取りを可能としている自治体も多いようだ。申請から受け取りまで一貫して保護者が代理で行えることで、自身のカード取得のついでに子供の分も手続きをした人も多いと思われる。
二つ目は、どの年齢においても女性のほうが男性よりもマイナポイントの効果が大きかったことである。マイナンバーカードの交付は、平日の日中に役所の窓口に取りに行くことが一般的である。就業率や、雇用者に占める正規雇用の割合が相対的に少ない女性のほうが、役所に足を運ぶための都合をつけやすかったと思われる。
また、女性は男性と比べて、ポイントに対する感度が高いこともカード取得を促した可能性がある。ネットエイジアが実施したアンケート調査「日本人のポイント活用に関する調査2020」(対象は20~49歳の男女各1,000名)によると、「ポイントサービスが好き」と回答した割合は、男性(77.8%)よりも女性(86.3%)の方が高かった。図表3を見ると、15歳未満と子育て世代の女性のマイナポイントの効果が同程度であることから、母親が子供の分のカードを一緒に申請した家庭が多かったのではないだろうか。
三つ目は、高齢者層では相対的にマイナポイントの効果が小さかったことだ。高齢者層は、身分証明書での利用によるメリットや、手続きのための時間的余裕があることから、もともとマイナンバーカードの交付率は相対的に高く、マイナポイントの効果が出づらかった。また、子育て世代のように、子供の分のポイントを受け取ることができるわけではないため、手続きの手間と比べてマイナポイントのメリットは小さい。さらに、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、重症化リスクが高い高齢者は、マイナンバーカード取得手続きのための人との接触を避けていた可能性も指摘できるだろう。