ユーロ圏失業率(2021年3月)-行動制限が続くなかでも悪化は見られず

2021年05月06日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:失業率は8.1%とやや低下

4月30日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏の失業率を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏19か国失業率(2021年3月、季節調整値)】
失業率は8.1%、市場予想1(8.3%)より低く、前月(8.2%)からも低下(図表1)
失業者は1316.6万人となり、前月(1337.5万人)から20.9万人減少した

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:行動制限は長期化しているが悪化は見られず

ユーロ圏の3月の失業率は8.1%と前月からやや低下した。前回からの改定では、今年1月・2月の失業率について、若干ではあるが改善方向に改定されている(1月改定前8.3%→今回8.2%、2月改定前8.3%→今回8.2%)。失業者数も20.9万人減となり、昨年11月以来の減少数となった(図表3)。

若年失業率は3月で17.2%となり、2月(17.3%)から若干改善しており(図表2)、3月は失業率・失業者数など主要指標はいずれも改善を示す結果だったと言える。なお、若年失業率の前月からの改定はほとんどなかった。

コロナ禍における景気後退の雇用状況を世界金融危機時と比較すると、雇用環境の悪化が長期間継続した世界金融危機と比較して、今回のコロナ禍では短期間で失業率の悪化に歯止めがかかっている(図表3・4)。欧州では、昨年11月頃から感染拡大や変異株の流行によって行動制限を強化する動きが見られるが、雇用関連指標の目立った悪化は見られていない状況と言える。
国別の3月の失業率も総じて改善している。3月のデータが公表されている18か国では悪化したのは3か国だけで、11か国が改善、4か国が横ばいとなっている(図表5)。若年失業率では、イタリアについては悪化幅が大きいが、多くの国では改善している(図表6)。
詳細な月次データを公表しているイタリアとポルトガルについて確認すると、3月はいずれの国でも就業者が増加、失業者と非労働力人口がともに減少し、雇用者数が増加している。改善幅は大きくないが、失業者や失業率以外の雇用環境の指標についても悪化は見られておらず、安定した推移を示している(図表7・8)。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2002年 東京工業大学入学(理学部)
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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