2021年1-3月期の実質GDPは、前期比▲0.9%(前期比年率▲3.6%)と3四半期ぶりのマイナス成長になったと推計される
1。緊急事態宣言再発令の影響で対面型サービスを中心に民間消費が前期比▲2.1%の大幅減少となったことがマイナス成長の主因である。設備投資(前期比1.6%)、住宅投資(同1.5%)は緊急事態宣言下でも堅調だったが、消費の落ち込みをカバーするまでには至らなかった。ワクチン供給や接種による押し上げはあったものの、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた医療機関の受診減少、「Go To トラベル」の停止から、政府消費が前期比▲0.6%の減少となったことも成長率を押し下げた。
また、世界的な経済活動の持ち直しを背景に輸出が前期比2.0%の増加となったが、国内の財消費の堅調を背景に輸入が前期比3.2%と輸出の伸びを上回ったため、外需寄与度が前期比▲0.2%(前期比年率▲0.7%)と3四半期ぶりのマイナスとなった。
実質GDP成長率への寄与度(前期比)は、国内需要が▲0.7%(うち民需▲0.6%、公需▲0.1%)、外需が▲0.2%と予測する。
名目GDPは前期比▲1.4%(前期比年率▲5.5%)と3四半期ぶりの減少となり、実質の伸びを下回るだろう。GDPデフレーターは前期比▲0.5%(10-12月期:同▲0.5%)、前年比▲0.3%(10-12月期:同0.3%)と予測する。国内需要デフレーターは前期比0.2%の上昇となったが、原油価格上昇の影響で輸入デフレーターが前期比7.0%と大幅に上昇したことがGDPデフレーターを押し下げた。
この結果、2020年度の実質GDP成長率は▲4.5%(2019年度は▲0.3%)、名目GDP成長率は▲3.9%(2019年度は0.5%)となることが見込まれる。
日本経済は2020年4-6月期に過去最大のマイナス成長となった後、2四半期連続で前期比年率二桁の高成長を記録したが、2021年1-3月期は緊急事態宣言の再発令を受けて再びマイナス成長となり、経済正常化に向けた動きはいったん足踏みとなった。ただし、緊急事態宣言の影響はサービス消費に集中し、財消費、設備投資、住宅投資などは堅調だったため、1月の緊急事態宣言発令時の想定と比べれば成長率のマイナスは小幅にとどまったとみられる。
緊急事態宣言はいったん解除されたが、4/25から4都府県を対象に3度目の宣言が発令された。今回は、酒類を提供する飲食店、百貨店(食料品など生活必需品の売り場を除く)の休業、テーマパーク・遊園地の休園など、経済活動の制限が前回よりも厳しくなっているため、一日当たりの下押し圧力は前回の宣言時よりも大きくなるだろう。現時点では、緊急事態宣言の期間が5/11までと短いことから、4-6月期はプラス成長になるとみているが、緊急事態宣言の期間が延長された場合、対象地域や規制の範囲が広がった場合には、2四半期連続のマイナス成長となる可能性が高まるだろう。
1 4/30までに公表された経済指標をもとに予測している。今後公表される経済指標の結果によって予測値を修正する可能性がある。
●主な需要項目の動向