ユーロ圏失業率(2021年2月)-改善傾向は止まり横ばいでの推移

2021年04月07日

(高山 武士) 欧州経済

1.結果の概要:失業率は8.3%と横ばいで推移

4月6日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏の失業率を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏19か国失業率(2021年2月、季節調整値)】
失業率は8.3%、市場予想1(8.1%)より高く、前月(8.3%)から横ばい(図表1)
失業者は1357.1万人となり、前月(1352.3万人)から4.8万人増加した

 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:1月から状況はほぼ変わらず

ユーロ圏の今年2月の失業率は8.3%と前月から横ばいだった。ただし、昨年9月以降の失業率はいずれもやや悪化方向に改定されている(1月は改定前8.1%→今回8.3%)。市場予想(8.1%)は改定前の失業率から見ての横ばいだったが、改定分だけ高くなった。

2月の若年失業率には17.3%と、1月(17.4%)から若干改善している(図表2)。若年失業率も改定され、やや悪化している(1月は改定前17.1%→今回17.4%)

コロナ禍における景気後退の雇用状況を世界金融危機時と比較すると、世界金融危機では失業者と失業率の増加が1年以上にわたって続いていた。今回のコロナ禍では昨年9月から12月まで4か月にわたって失業者の減少(改善)が続いていたが、年明け1月からは2か月連続で失業者が増加し失業率も下げ止まっている(図表3・4)。
国別の2月の失業率を見ても1月からほぼ横ばいとなった。データが公表されている16か国のいずれも0.2%ポイント以下の変化幅であった(図表5)。

一方、若年層失業率は14か国中11か国で改善、3か国で悪化した。変化幅の小幅な国も多あったが、イタリア(1月32.7%→2月31.6%)やポルトガル(23.0→21.6%)では悪化が目立ち、フランス(18.5→19.2%)では改善幅が大きかった(図表6)。
詳細な月次データを公表しているイタリアとポルトガルについて確認すると、2月はいずれの国でも失業者と非労働力人口が減少したが、変化幅はわずかだった(図表7・8)。

ユーロ圏では昨年11月以降に行動制限を再強化しており雇用環境の改善は止まっているが、全体として見ると悪化が進む状況にも陥っていないと言える。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2002年 東京工業大学入学(理学部)
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

レポートについてお問い合わせ
(取材・講演依頼)