冒頭に記したように、米国の生保会社は2020年の決算期末を終えて、順次、業績を公表し始めているが、まだ業界全体での2020年の決算結果を示す統計はない。
そこで米国の保険格付・調査機関であるAMベスト社が11月に公表した、2020年9月末までの統計を、決算動向を示唆するものとして紹介することにしたい。
「ファーストルック:2020年1~9月の生保・年金会社の財務状況」と題するこのレポートは、2020年11月23日までの間にAMベストが受領した各保険会社の1~9月業績数値を集計したものである。AMベストは、集計に含まれた保険会社は、保険料ベースで業界全体の94%を占めると推定されるとしている。
「生命保険・年金業界の純利益は、2020年の9ヶ月間に半減した」と見出しをうつ、このレポートによれば、2020年当初9ヶ月間の米国生命保険・年金業界の保険料収入は、パンデミックの中でも対2019年当初9ヶ月間で微減(マイナス0.9%)にとどまった。
ただしその内訳は、本稿の対象である個人生命保険と個人年金の保険料はそれなりに減少した一方で、団体生命保険と団体年金の保険料が増加して、結果的に保険料収入の合計数値で前年度数値に近いものになったというものである。団体年金では、経済情勢が厳しい中、確定給付年金の責任を生保会社が企業から肩代わりする年金リスク移転が行われたことが大きい。
この保険料収入のわずかな減少を投資収入のわずかの増加(1.1%増)等が補い、2019年の当初9ヶ月間とほぼ同水準の経常収益となった。
支出面では、パンデミックの影響で、死亡保険金の支払いが12.2%増加した。高齢化の中、年金給付金も4.4%増加した。一方で、パンデミックにもかかわらず、解約返戻金が5.8%減少し、一般経費その他の費用も減少した。
それらの結果、税引前純営業利益は前期比60.4%減となったが、税負担の減少と実現キャピタルゲインの増加により、この影響はわずかに緩和され、純利益は2019年の当初9ヶ月と比べて56.6%の減少となった。パンデミックの中、利益が減少するのはやむを得ないことであろう。
死亡保険金の支払いは増加したが、増加幅は対前年同期比で12.2%ということで、十分対応できる水準であった。一方で、パンデミックの中でも、解約を控える動きがあるのは興味深いことである。